秋と春か夏か冬〜16話『みんなでお泊まり温泉旅行・前編』〜-7
「ねぇ恭介、夏休みに入ったらデートしようね♪」
「ばか!なんでデートしなくちゃいけないんだよ」
付き合ってないのにデートと言うのは何か嫌だ。
「良いじゃんかぁ!行こうよデート♪」
「い・や・だ!デートって響きが特にな…って、んな悲しい顔すんなよ。まぁ…遊びに行くとか買い物とかなら普通に付き合ってやるからさ」
「…ホント?」
「まっ、暇なときな」
「…ありがとう。『やくそく』だよ♪」
――!!?!?!
「あ、あぁ…」
(なんだこの感じ……)
昔こんな森の中で夏輝と2人で会話している、妙な既視間を覚える。
そんなことを思いながら恭介は旅館に戻っていった。
――《…ぜったいにやくそくする!だから…僕をきょうすけくんの…》――
(…さっき頭の中を走ったのこの言葉は一体なんだったんだ?)
―――『やくそく』――
…この言葉が、恭介の頭に強く引っ掛かっていた。
――1日目・夜――
恭介と夏輝が散歩から帰ってくると、すでに辺りは真っ暗だった。部屋に戻るとこちらに気づいた理緒が話しかけてくる。
「恭介、夏輝さんも…どこ行ってたんです?」
「悪い理緒。ちょっとそこらへん散歩してたんだ」
「あはは〜心配かけてごめんね」
「構いませんが…。それより恭介たちも、ご飯の前に温泉入ってきたらどうです?僕たちはもう入ってしまいましたよ」
「あぁ、そうするよ……ところで横の死体はなんなんだ?」
「拓也さんです。その……女湯を覗こうとして…」
「なるほど…あのメンツを覗こうとするなんて、死にたいと言ってるようなものだな。命がいくつあっても俺は御免だ」
同情する恭介だった。
そして風呂から上がる。う〜ん…良い湯だった。
余談だが、この温泉である人とハプニングが起こる。だがそれは明日のお話。
風呂から上がった恭介が木造の廊下を歩いていると、香織が縁側に座りながら外を眺めついた。