恋の奴隷【番外編】―心の音@-2
「…平気よ。何か用?」
私は顔を強張らせつつも、平然を装いそう聞いた。
「用ってゆうか…結城さん今日すっげぇ笑ってたじゃん?なんか可愛いなぁって…」
彼は恥ずかしそうに頬をほんのり染めて、どもりながらそう言った。
─い、いきなり何を言い出すんだ、この人は。
私はぽかんと口を開いたまま、目をパチクリさせてしまったわけで。
「ぶっ…あははは!変な顔ッ!」
「ッ!?」
いきなり笑い出したと思えば変な顔って…。
「何なの!?失礼じゃない!」
私がわなわなと怒りに震えながら言うと、
「あははは!だ、だってナッチーってば可愛い過ぎっ!」
苦しそうに笑いを噛み殺しながらそんなことを言い出して。“ナッチー”なんてセンスのないあだ名まで付けてくれちゃって。どこかで聞いたことがあるような、ないような…。何だかしっくりこないけれど、そんなことは置いといて。
「…し、椎名君。私委員会があるからお先に失礼するわね。…それと、あなたみたいな人、大っ嫌い!なの」
私は込み上げてくる怒りをぐっと堪えて、満面の笑みをこしらえて嫌味たっぷりそう言ってやった。呆然と目を丸くして立ちすくんでいる奴の脇を、私は勝ち誇った顔で通り過ぎると、くつくつと後ろから嫌な笑い声が耳に入ってきた。
「俺は好きだぜ?お前みたいな奴」
ギョッとして体ごと振り向くと、奴がにんまりとこちらを見て笑っていて。予想だにしない奴の言動に、私の思考回路はパニックを起こしてしまったわけで。
逃げるようにその場から走って立ち去った。しかし、これは単なる通過点にしか過ぎなかったの─。