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恋の奴隷
【青春 恋愛小説】

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恋の奴隷【番外編】―心の音@-1

私の名前は結城夏音【ゆうき なつね】。17歳。
恋に恋するお年頃だというのに、私自身はそんな浮ついた話しがこれっぽっちもないわけで。それどころか、そんな煩わしいものの何がいいのだろうと、バレンタインやカップル行事に浮足立っている友達を見ては、つい客観視してしまうのよね。
だって恋をするって決してイイコトばかりじゃないじゃない?
それはヒデを見ていれば嫌ってほど分かる。
彼とは中等部からの仲で、私にとって数少ない男友達の一人。私の親友である柚姫【ゆずひ】に長いこと想いを寄せているのだけれど。柚姫は呆れるくらい鈍感な子だから、ヒデの気持ちにこれっぽちも気付いていないわけで。ヒデもヒデで、なかなかストレートに自分の気持ちを打ち明けようとしないからいつまで経っても関係は平行線のまま。いつかヒデの想いが報われるよう願うのだけれど、今の状況だとかなり厳しいのよね。
いつだったか、あまりにもヒデが辛そうにしているものだから、見ている私まで何だか苦しくて、諦めるという選択肢はないのか尋ねてみたことがあったの。けれど、ヒデは寂しそうに首を横に振った。そんな簡単に諦められるような恋じゃないんだって。私にはそんな気持ち、ちっとも理解出来なかった。だって、恋ってものが何なのかさえ分からないのだから。
馬鹿ね、と顔をしかめて言う私に、ヒデは眉を八の字に下げて困ったように笑っていたけれど。ちょっとだけ羨ましく思えた。

悩み傷付いても人はまた恋をして。それが叶わぬ恋だと分かっていても、どんなに不安や悲しみに押し潰されてしまいそうになっても恋をするから。そうしてみんな成長していくのだから。恋には様々な形があるとよく言うけれど、今までその一つだって見付けることが出来ない私は、この先もずっと一人ぼっちな気がして。
だから、その時の私には、恋ってものが自分でも気が付かないうちにふと落ちてしまうものだなんて、分かるはずもなかったの…。



Scene1―通過点

長いようで短い夏休みが終わり、また平凡な学校生活が始まった。しかし、まだまだ夏特有の蒸し暑さは残り、クラスメイト達も夏休みボケした気の抜けたような顔で教室へ続々と入って来る。ほんの一ヶ月ぶりだというのに馬鹿みたいに再会を喜び合う人もいれば、すっかり日に焼けてまるで別人の人もいたりなんかして。いつもとちょっぴり変わった教室のそんな風景を眺めていると、私もなんだかんだ楽しい気分になってしまった。
そんな中、柚姫は今にも泣き出してしまいそうな顔で、教室に入るなり一目散に私の席まで駆け寄ってきて。宥めつつも、とりあえず事情を聞いていたのだけれど、あまりにも可笑しな話しなものだから、つい馬鹿みたいにお腹を抱えて笑ってしまって。柚姫はすっかりへそを曲げてしまい、委員会の集まりがある私は後ろめたい気持ちで教室を後にしたのだけれど、つい思い出し笑いをして口元を緩ませながら廊下を歩いていた。すると、後ろから急に肩を叩かれて、思わずびくりと飛び上がってしまった。

「ゴ、ゴメン、結城さん!驚かせちゃった?」

振り返るとそこには、同じクラスの椎名葵【しいな あおい】が申し訳なさそうに眉を下げて立っていた。

─彼は高等部から入学してきたのだけれど、所謂モテ系ってやつかしら。当初から彼の人気は目を見張るもので、授業の合間の休み時間も彼を一目見ようと教室へやって来るミーハーな女子が後を断たなかった。サッカー部やら陸部やらその他もろもろ、あらゆる部活から助っ人を頼まれるほどスポーツ万能で、成績はいつも学年上位、モデルのようなルックスときたら無理もないだろう。一年生の時も彼とは同じクラスだったけれど、ほとんど話したことはなかった。私とは住む世界が違うというか…ひねくれているのかも知れないけれど、彼を見ても周りの子が抱くような感情─カッコイイだとかそんな風に思ったことがないのよね。むしろ、女の子にいつも取り囲まれて笑顔を振り撒く彼を見て、哀れみさえ感じてしまう。とてもじゃないけど馴染みがたい。


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