学園の社長〜社長の連盟騒動〜-9
そんな俺の気持ちはいざ知らず、山崎は入り口を開けると素早くボートを出る。ボートの入り口である扉を開けると、もう一つ大きな扉があった。恐らくこれが潜水艦へと続く扉だろう。山崎はその扉も開けて、中に入っていく。俺も恐る恐るそれについていくのだった。
俺が無事に潜水艦内部に入ったことを確認すると、山崎はさっさとボートの入り口と潜水艦への入り口の二つの扉を閉めてしまった。
見回してみるとそこはエレベーターを少し広くしたくらいの大きさのヒンヤリとした空間だった。俺たちが来た扉以外にもう一つ大きな扉があり、そこから潜水艦内部へと通じているようだった。
「この部屋の扉とボートの扉をワイヤーでつなげているわけですか」
「その通りだ。普段はボートと潜水艦のこの部屋は巻き取り式のワイヤーで連結されており、ボートを潜水艦から出すときはまず先にこの二つの扉を完全にシャットアウトしてボートと潜水艦を完全に別々に切り離すのだ、そして再びワイヤーによって自動的にボートが巻き取られ、無事にもとの場所に収納されると再び 二つの扉を開けるわけだ。そのために海水が一切入らずにこのボートを通じて、水中から潜水艦の中に入ることができる。いってみればこの部屋は潜水艦の玄関口だな。さらには潜水艦からボートをコントロールできる仕組みもあるが、それは学生の君相手に説明する必要はないだろう」
山崎はふっと俺を小バカにした様子でいった。その態度に少しイラっと来た。だが、それと同時によく考えられた構造だと感嘆もした。これなら潜水艦内に、浜に打ち上げることなく出入りできるわけか。
「そして船長はこの潜水艦を使って普段は海の中を移動しているのですね?」
「いや、移動とはいわないな。我輩の場合はここを生活の場、すなわち家としているのだからな。とにかく艦の中を見たら分かることだよ」
そういって山崎は目の前の扉についているスイッチを押す。扉がひらき、潜水艦内部とは思えないほど長く、そして横にも広い廊下が目の前に現れた。恐らく俺の学園の廊下よりも少し広いかもしれない。
廊下の左側には丸型の窓がいくつもついており、そこから海中の様子をのぞくことができた。とても美しい光景だった。明るいブルーの背景にいくつもの魚の形をした黒い影がウヨウヨと潜水艦の近くをさまよっている。窓の反対の右側には別の部屋へと通じる扉がある。
「この廊下を渡って手前の部屋が船員室だ。すなわち寝室であり、我輩が普段の生活の場としているところだ」
「それは見たいですね」
山崎が指した扉は引き戸式の、白塗りでシンプルなつくりの扉だった。この先にはどんな部屋があるのだろうか。正直なところ俺がこの潜水艦で興味あるのは寝室だけだった。普段どうやって海の中で日常生活を送っているのかその内容がよくわかるので興味が沸いてくる。
自慢の寝室らしく、山崎は力強く手前の扉を開けた。
「諸君、ここが我が生活の根城となる場所だ」
諸君といっても俺一人しかいねえよ。そう心の中で突っ込みをいれつつも部屋に入り、一通り目を通す。そして感嘆した。
そこは実に快適に作られた部屋だった。ベッド、ノートパソコンの置いてある木製の作業机、観葉植物(枝の部分に幸福の木と書かれている札がかかっていた)、そしてソファーなど部屋に必要なものが過不足なく配置されている上に、廊下でいくつもあったような窓がこの部屋の一角にもあり、部屋の中から海の様子をうかがうことができた。その光景を見て、どんな一流高層ホテルの一室の眺めでもこの部屋からみた海の光景には到底勝つことはできないだろうと俺は思った。< /SPAN>
さて、部屋の壁際のほうを見てみると、際ソファーの前には巨大なスクリーンがあった。