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銀色に鳴く
【純愛 恋愛小説】

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銀色に鳴く-1

「好き―――なんです。」
その言葉を聞いて、なによりまず、嬉しかったのは確かだ。
彼女は素敵だし、綺麗だし、可愛い。
でも残念ながら僕は、彼女の想いに答えられる程、いい男じゃない。




『1:想い』


失恋をした後の心という物は、確実にその人物に悪影響を与えていると思う。
辛いし、切ないし、苦しい。
誰だって心身に影響を受けない人は無いと、僕は確信している。
僕だって例外じゃない。
当たり前だけど、人並みの恋をして、人並みに失恋だってする。
そんな恋は、僕のどこかを失うには充分な破壊力を持っているし、僕のどこかを補完するにはどこか足りない力弱さを持っていた。
悲しくも、絶対的に。

もしこれが再生の物語とするならば、偽善的な気がする。
けど
彼女の存在のおかげで、何かが変わった事は確かだった。


◆ ◆ ◆

彼女、つまり、『田中真琴』から告白を受けたのは一週前。冬が力を弱め、春が世界の隅からじわじわと勢力を伸ばしつつある2月中旬の事だった。




碧礫の空とたゆまぬ光達、飽和した太陽が産み落とす優しさに包まれ、僕は眠っている。
浅い、浅い眠りだ。
少しの力が働くだけで覚めてしまう様な、そんな心地いい眠りの中にいる。
眠りの中にいるというのに、僕の意識は妙にはっきりとしているのが不思議だ。僕が眠っているという事実を、僕は寝ながらにして自覚をしている。
そして夢を見ている。
“夢を見ている”という事実を認識しながら、夢を見ている。
不思議な感覚だった。眠っているのに、起きている。その二つの相対する行為を、僕は同時に行っていた。
それはとても気持ちが良い事でもあった。

―――バンッ!!
そんな眠りを妨げるかの様に勢い良く扉が開く音がして、僕はようやく完全なる覚醒をすます事になる。
まだふぬけている四肢と会話をしながらゆっくりと体を起こし、眠りを邪魔した原因を見る為に振り返った。
「――はぁ、やっと見つけた。またこんな所で昼寝して」
そう言葉を発したのは、担任の先生である長田 秋だった。
「5限目、始まってるわよ」
そう言いながら呆れた顔で歩み寄ってくる先生。眉間を寄せた眼には、若干疲れが見える。
「――はぁ、まったく、仕方ないわね」
そう言って横に座りこむ。長い髪がフワリと揺れて、甘い、切ない様な匂いがたつ。
ポケットから煙草を取り出し口にくわえるその仕草が、どことなく女を思わせたのでドキッとした。
「――まぁいいか、天気もいいし。私もフケッちゃおう」
煙を吐きながら、彼女は言う。魅惑的で、官能的に。


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