傾城のごとくU終編-5
「あら。早いわね」
私は目を両手で擦りながら、
「チコの事で、なんだかよく寝れなくて…」
「だったら毎日チコに風邪になってもらおうかしら。アンタの遅刻癖も直るかもね」
そう言って、母は笑いながら朝食の準備をしている。
何てひどい事を言うんだ!ホントに親か?
などと思いつつ、私はテーブルに座ると、
「起きるんだったら顔洗いなさい」
母の言葉で洗面所へと向かう。
歯を磨いていると、父が洗面所に現れた。〈オッ。珍しく早いな〉と驚いてる。
「おほーはんもははいじゃはい」
歯ブラシをくわえたまま答える。
「俺はいつもこの時間だぞ」
そう言って立ち去ろうとした時、父は立ち止まり、私の顔を見つめた。
「へッ?」
私は振り返った。が、父は〈何でもない〉と言って書斎へと戻って行った。
早めの朝食を摂り、自室に戻って普段着に着替える。お腹が満たされたために、私は眠ってしまった。
「こら!千秋!」
大声にビクッとして私は目が覚めた。母だった。半分意識が無い私に〈ゴハン食べた切り居ないと思ったら、なに2度寝してるの!〉と、叱り付ける言葉がが浴びせられた。
「…今、何時?」
「昼の1時よ!さっ起きて」
今度は遅い昼食だ。
私は起き上がると同時に、異様な寒さを感じた。
「何だか…寒くない?」
「天気予報じゃ、今日は寒の戻りだって」
台所で、チコの餌入れが見える。水もドライフードも空だった。
昼食を摂りながら、テーブルで母に訊いた。
「お父さんとお姉ちゃんは?」
「お父さんは書斎。小春は出掛けたわよ」
「ヘェ、お父さん居るなんて珍しいじゃん」
私は昼食後、夕方まで居間でテレビを見ていた。
〈ルルルルルルッ〉
電話が鳴った。母は、〈ハイハイッ〉と小走りに受話器を取った。