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『傾城のごとく』
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傾城のごとくU終編-6

しばらくの沈黙の後、〈あっ、ちょっとお待ち下さい〉と言って私の方を見ると、

「千秋。お父さんに電話だから呼んで来て」

「うん」

私は書斎に父を呼びに行った。

「お父さん!電話だって」

父はパソコンの手を止めて、〈分った〉と立ち上がり電話に向かって受話器を取った。

父の電話はごく短かった。〈お待たせしました。〉から始まり、〈分りました〉と言って電話を切るまで1分と掛っていない。

「千秋…」

父は怖い顔で私を呼んだ。

(…エッ……)

「…動物病院から、すぐに来てくれとの事だ」

「ええっ!!」

私はハンマーで頭を殴られたようなショックを受けた。
慌てて父の車で病院へと急ぐ。

その車中で父が私に語り掛けた。

「昨夜遅くに電話があった。チコは先天性の白血病だそうだ。……まず助からんらしい…」

「そんな!……急に…急にそんな事…言われ…ても…」

私の頭はパニックだった。ただ、駄々をこねる子供のように泣きじゃくっていた。

病院へ着くなり、私は走り出す。

「センセイ!!チコは!チコは!…」

先生は奥の部屋から私を迎えると、

「さあっ、こっちへ」

とだけ言った。私は、おそるおそる奥の部屋へ入った。

そこにはたくさんのチューブやコードを付けられたチコが、台の上で横たわっていた。

「…そんなぁ!か、風邪って……」

私は力無くヒザから崩れ落ちた。
先生は静かに答えてくれた。

「もう…脳死状態なんだ……この生命維持装置で生き長らいている。後は君が判断してくれ……」

「……そんな…」

私はそれには答える事が出来ず、ただ嗚咽を上げていた。

私の肩を父がギュッと掴んだ。

「…千秋…お前が決めるんだ……」

涙で滲む目で横たわるチコを見た。機械によって膨らむお腹。
私はチコに近寄り頬を寄せた。規則正しい鼓動、温かい身体。

その姿は眠ってるみたいだ。


「…センセイ……お…おね…お願いし……外…して…」

先生と看護師さんが、チューブを外し、機械を止めた。心電図のモニターが大きく乱れ、けたたましいアラーム音が部屋に響く。


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