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『傾城のごとく』
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『傾城のごとくU』中編-3

「あ、となりの木内さん。おはようございま〜す」

木内さんはミニチュア・ダックスのチップを散歩させていた。

「おはようチップ!」

しゃがんで頭を撫でてあげる。
途端にシッポをぶんぶん振りながら、チップは私の顔をペロペロ舐めてくる。

「もう!分かった。止めて!チップ」

私は叫ぶがチップは止めない。

「チップ止めて!」

「ギャンッ!!」

(エッ、何?今の…)

手に残る感触。
辺りを見ると私は布団の中だった。

「ニャ〜、ニャアン」

慌ててスタンドの灯りをつける。
見れば部屋の隅にチコがチョコンと座り私を睨んでた。時計は朝の5時半を示してる。

「アンタさ〜、少しガマンを覚えなさい!」

チコはなおも座ったままだ。
私はぶっきらぼうに言った。

「チコ。ゴハン?」

「ニャ〜ン」

ヘェ〜、人の言葉が分かるんだ!

感心しながらベッドから這い出て下へと降りる。チコはおぼつかない足取りで私について来る。
どうやら犬や猫の4本足の動物は階段を上がるのは上手いが、降りるのは下手みたいだ。
チコは一段づつをゆっくりと降りて、廊下にたどり着くと爪音を立てて台所に駆け込んで来た。

チコの餌入れは空だった。

寝る前にタップリ入れて、最後に母が入れたはずだから夜中に相当の量を食べてる。

「チコ。アンタ大人になったらデブになるよ!きっと…」

ドライフードと水を餌入れに入れて、チコを台所に残して再び2階へと上がった。

「これで、あと1時間は眠れるっと……」

2度寝しようと布団に入り、スタンドの灯りを消した。空は黒から藍色へと移り掛けていた。




「お母さん!何で起こしてくれなかったの!!」

「中学生にもなって何言ってるの」

2度寝した私は目覚ましが鳴っても無意識に止めたらしく、気付いたら7時をかなり過ぎてた。
慌ただしく顔を洗い制服に着替えると、学校へと走った。




「千秋。顔青いよ、大丈夫?」

友達の亜紀ちゃんが心配してくれている。私は走り通しで学校になんとか間に合った。
朝のホームルーム直前に教室にたどり着く。
息が上がり最近の寝不足のためか、気持ち悪い。


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