白ぃ華が咲き乱れる頃〜love letter〜-5
【ずっと愛する涼輔クンへ。
この手紙を涼輔クンが読む頃、あたしはあなたの世界には居ません。】
手紙は、そんな書き出しだった。
自分はエイズに感染していた事、その経緯、蘭が俺に知られたくないと思っていた事実が、淡々と綴られていた。
そして俺への謝罪、感謝。
でも俺は、そんな言葉は望んでいなかった。
蘭の幸せが、俺の幸せだったのだから。
【涼輔クン、あたしに初めての幸せをイッパイくれて、本当に本当にありがとう。あたしの人生は本当に幸せでした。最高に大好きな親友にも、最高に愛するあなたにも出逢えて、きっと他の誰にも比べものにならないくらい、あたしは幸せだった。
人生なんて長さじゃないと思うの。どれだけ人の心を動かし、幸せを与え、感じ、充実していたかって事だと思う。
そう考えると、あたしはパーフェクトなの。こんなに素敵な人生はないよ。
あたしは生まれ変わっても、またあたしとして、藤本蘭として、のぞみと出逢い、あなたと出逢う人生がイイ。あたしはこの人生が大好き。
きっとあたしは、いつまでもあなたの傍に居るから。大きなお世話かもだケド、あなたに彼女とか出来ちゃったら嫉妬しちゃうかもだケド、ずっとずっと傍に居る。ずっと見守ってる。幸せを祈ってる。
だから絶対、自分を責めたりしないで。
蘭は、涼輔のおかげで、こんなに素晴らしい人生を歩む事が出来ました。
それはあなたにしか出来ない事。
だから、どうか自信を持って。一人の女の子を、こんなにも幸せに出来るあなたは素晴らしい。
あなたと過ごした期間は短かったケド、心の底からあなたを愛してます。
最期に、幸せな記憶をありがとぅ。
蘭より】
俺は気付いていた。
蘭が亡くなっていた事を。ただ、認めたくないだけだった。
格好悪いケド、今日は思い切り泣かせてくれ。蘭がいない事実を受け入れ、立ち直るのは時間がかかるケド、絶対もう泣かないから。
『ぅ…うぁぁぁぁぁ!!らんーーー!!!』
―12月25日―
カサッ…
俺とのぞみサンは、蘭の花を蘭に渡すと、粉雪の降り始めた空を仰いだ。
そしていきなり何かを首に巻かれた。
どうやらマフラーらしい。だがそれは、俺の首を一周しか巻けなかった。
『これは??』
「クリスマスプレゼント。蘭からの…。」
俺は目を瞑り、また空を仰いで呟いた。
『蘭…おめでとう。そして、ありがとう…』