投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『傾城のごとく』
【その他 その他小説】

『傾城のごとく』の最初へ 『傾城のごとく』 19 『傾城のごとく』 21 『傾城のごとく』の最後へ

『傾城のごとくU』前編-8

「じゃあ、今度は排泄しましょうね〜」

私は綿棒にオリーブオイル、ウェットティッシュを揃えてチコをトイレに座らせた。
綿棒をオリーブオイルを塗って、チコのオシリを軽く叩いてやる。
今度は〈ジャーッ、ジャーッ〉と鳴き出した。3日間、病院でやったけど上手く行かない。

「ホラッ、チコ出すのよ」

しばらく叩いていると、鳴くのを止めて身体を丸めた。

もう少し。

チコの身体が〈ブルッ〉と震える。

「よかった…オシッコもウンチもしてる…」

昨日までと違う。ひとりで何とかやれた。

排泄を終えたチコのオシリを、ウェットティッシュで拭いてやり、再び寝所に座らせる。
チコはそのまま丸くなると眠ってしまった。

「ちょっと遅くなったわね。ゴハンにしましょう」

「…もう9時近く……」




遅い晩ごはんを食べていると、母が訊いてきた。

「仔猫も数時間おきにお乳あげるんでしょ」

「そうよ」

「昼間はどうするの?アンタ学校じゃ世話出来ないでしょ」

「…そ、そうだけど……」

私は返答に困った。
チコを飼う事ばかりに気持ちが行って、肝心な昼間の世話を忘れていた。
母は私の顔をしばらく見つめて、ため息を吐くと、

「…仕方ないわね。さっきの要領でやれば良いのね?」

「…うん、ごめんなさい」

「じゃあ、夜は私にやらせてよ!」

「お、お姉ちゃん!」

驚いた。姉の小春が手伝ってくれるなんて。

「分かった。昼間はお母さんで、朝と夕と夜は私、夜中はお姉ちゃんで良い?」

母と姉が頷いた。良かった。心配事が一番良い結果で片づいてくれた。

私は嬉しさと、緊張が解けたので急にだるくなった。

「…ご馳走様…お母さん。私、今日から居間に寝るから…」

「…仕方ないわね」

2階からマットに厚手の毛布を、居間に運び込んでチコの寝所横に敷いた。
チコは音にも反応せず、スヤスヤと眠っていた。

「じゃあ私、ちょっと眠るから…零時前に起きてチコの世話したらまた眠るから…」

母と姉は〈自分達もそれを見て寝るから〉と言ってくれた。
時計を見ると10時前。私は布団に潜り込んだ。ミルクみたいなチコの匂いがする。

私はすぐに眠ってしまった。

かくして、私とチコの〈短い共存生活〉が始まった。


『傾城のごとく』の最初へ 『傾城のごとく』 19 『傾城のごとく』 21 『傾城のごとく』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前