『傾城のごとくU』前編-2
「5,775円です」
補乳瓶にミルク。トイレの砂にノミ取り用の櫛。それに餌入れと綿棒やオリーブオイル、ウェットティッシュ等々。
後は飼育のための本が1,200円だから、7,000円で必要なモノは揃う。残金と私のわずかな貯金で、病院の検診なんかも連れて行かなきゃならない。
正直辛いなぁ。
買物を終えた私は、お礼も兼ねて亜紀ちゃんをハンバーガーショップに誘った。
「チーズバーガー・セットを2つ」
私達は窓際の席に座り、どちらからともなく猫の話になった。
「でも、よく親が許してくれたねぇ?」
「うん…でも、世話は全部、私がやる条件なの…」
そう聞いた亜紀ちゃんは鼻で笑いながら、
「ハッ!そんなの当たり前でしょ」
「でもさ。これから病院代とかも掛かるし、その度に私のお金じゃ……」
「まっ、それは何とかなるんじゃない」
「……?」
私は亜紀ちゃんの言ってる意味が分からなかった。
亜紀ちゃんに後で行く事を告げて、私は自宅近くで別れた。
「ただいま〜」
私の声に反応して、居間から母が出てきた。
「おかえ…!何?その大きな袋」
「エヘヘ…仔猫を飼う道具」
私は居間に入ると、驚く母に袋の中身を披露する。
「これが補乳瓶とミルク。それに爪研ぎの板…ノミ取り用の櫛。それとトイレの砂に…これが…猫のオモチャ!」
「えらく散財したわねぇ……」
「これでも少ない方だよ!寝所とトイレにキャリーバッグは亜紀ちゃんから貰うんだから…」
呆れ顔の母と荷物を居間に残して、私は亜紀ちゃん家におさがりを貰いに出かけた。
「ドア開いてるからさ。上って来て!」
インターフォン越しの声に言われたまま、私は亜紀ちゃん家に入って行った。
「お邪魔しま〜す」
玄関を入ってすぐに、彼女の愛猫〈フミ〉が出迎えてくれる。