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『傾城のごとく』
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『傾城のごとくU』前編-3

「フミ!こんにちは」

フミは私の足にスリスリすると、トコトコと奥へと歩いて行く。
〈付いて来い〉と言ってるようだ。
家に来たのが7月だから〈文月〉という本名を付けたそうだが、呼び難いので自然とフミになったらしい。
灰色の短毛はツヤツヤで、私にはとっても品の良い猫に見える。
フミに付いて私は亜紀ちゃんの部屋に入った。

「待ってたよ!」

亜紀ちゃんは、すでに用意してくれていた。

「こんなに…良いの?」

「当たり前じゃない!寝所とトイレは洗ってキャリーバッグは消毒したわ。フミの匂いが付いてちゃイヤがるでしょ」

私は彼女の気遣いに感激した。

「亜紀ちゃん…ありがとう…」

「また、千秋はすぐ泣く!…私こそ要らない荷物が減るからありがたいの!」

亜紀ちゃんは照れた顔で言ってくれる。私にはそれが嬉しい。

「ホラッ、これで拭いて」

渡されたティッシュで涙を拭いてると、

「ちょっとフミ!何してんの」

亜紀ちゃんの声はフミを怒ってる。ふと見ると、小さな寝所にギュウギュウになって入ってる。

「それはアンタのじゃないの!出なさい」

亜紀ちゃんに怒られて、寝所から引っ張り出されるフミはバツの悪い顔で〈ニャ〜ン〉と鳴いた。

その顔がおかしくって、

「…アハハ…ハハ…」

「そうそう!前も言ったけど、アンタに泣き顔は似合わないよ。
特に今日は仔猫が来るんだからさ」

「…うん、ありがとう」

私はお礼を言って、フミの寝所とトイレとキャリーバッグを譲り受けた。





お昼過ぎには必要な物をひと通り揃え終り、居間で母と姉に見せていると父が帰って来た。

「ただいま…おっ!随分と揃ったなぁ」

「お父さん。お帰りなさい!」

「そうなのよ。この娘ったら、帰って来てからずっと仔猫の話ばかりで…」

母のに続いて姉、小春も私を茶化すように、

「昼ごはん食べてる時もずっとニヤニヤしてるのよ」

「だって…嬉しいもん」

ふくれて姉に反論してると、父は笑顔を向けて私の頭に手を置いた。


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