幼馴染みの定義-1
生まれた年が一緒で、その頃はまだ『お隣さん』と呼び合える仲だった。
幼稚園、小学校にも一緒に通い、何年経とうが同じ組で同じ班。 既に『幼馴染み』になっていたらしい。
中学に入り、おれ達は次第に離れていった、離れざるを得なかった。
男子は男子、女子は女子、つまり、男女別の世界。 こんなくだらない決まりが、この時のおれは嫌いで嫌いで堪らなかった。
だが、『環境』というものは本当に恐ろしく、すぐに慣れてしまった。
バカが多いけど気さくな男友達、おれにはそんな仲間がいる、女なんていらない。 そう考えていた時期もあった。 おれの中での『幼馴染み』の存在は、どこか遠くに消えていた。
高校生活を充実に過ごす中、ふと思いつく。 " あいつはどこに行った? "と。
あいつというのは例の人物。 あいつの『今』を確認する為に、隣の家まで数歩ほど足を運ばせた。
玄関先でフックを鳴らし、数秒後、そいつと対面する。
久々に見るハナの顔。 凛々しい顔つきで『女性』らしく変わっていたものの、胸は相変わらず『女子』だった。
「久しぶりだね」
久々に聞くハナの声。 その言葉に、思わず大きく頷いてしまった。 故に首を痛めてしまった。
いつもは、昔は、こんなボケを咬ますおれの姿を見て、けらけらと笑うハナがいた。
目の前には、笑わないハナがいた。
「入る? お茶しか用意できないけど」
即座にそう言われ、首肯する他がなかった。
それから高校のこと、親友のこと、他愛のない話をたくさんした。
おれが一方的に話し、無理矢理聞かせいてる状態ではあったが。
案の定『今』を確認できただけだった。
おれは彼女が好きなのか? いいや、そんなんじゃない。 なら、おれは何をしにハナの家に行ったんだ。
大学に入るまで、ずっとそのことで悩んでいた。
" ただの『お隣さん』であるおれは、何がしたいのか? "
" ただの『幼馴染み』であるおれは、彼女の為に何をしてやるべきなのか? "
その答えは、夏の休日の朝にパッと出た。