幼馴染みの定義-6
「おれはハナを笑わせたい」
「知ってるよ」
「はっ?」
やっと伝えられたのに、この展開は一体なんだろう。
誰が見ても、今のおれは口をぽかーんと開けて、アホ同然だった。
おれが何ヶ月かに及んで考え出した案を「知ってる」と、ハナは言った。
「い、いつから?」
「たぶん、高校生の頃から考えてたんじゃない?」
読まれてる。
「もっと正確に言えば、久しぶりにうちに来た時からだと思うよ」
本当に胸の中心の半径5センチくらいぽっかり穴が開いたような気分になる。
その上開いた穴に粘土を詰め込まれたような、なんだかもやもやした気分だ。
「それで?」
「え?」
「笑わせたいからなに? アイくんが何かしてくれるの?」
「あ、ああ、そう」
「申し訳ないけど、いらないよ」
そして、その粘土にマシンガンの弾を浴びせられて、痛くないのにもの凄い虚無感があるような、そんな気分。
「そりゃあ何かしら話題があれば適当に笑うよ。 でもね、アイくんとの話はおもしろいけど、本当の笑いは出てこない」
「3」は「0」になった。
「なんでだか、わかる?」
ハナに対して何か悪いことをしたのかもしれない。 必死に記憶を蘇らせた。
思い出せるのは小学校と、中学校に入学したばかりの時の記憶だけ。
悪いことはしていないと思う。 だが尚更わからない。
「い、いや、わからない」
「アイくんが嫌いだから」
その瞬間「0」ですらパッと消えた。
会話はそこで途絶え、自然に終了した。
二人で歩く久々の道路は、とても気まずいものだった。
おれとハナの距離はそんなに遠くない、むしろ近い方と言える。
だからこそ、気まずかった。 むしろ離れた方がいいんじゃないかと思った。
言葉が出てこなかった。