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幼馴染みの定義
【幼馴染 恋愛小説】

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幼馴染みの定義-3

 本人を目の前にかしこまり、緊張してしまって思いが伝わらないのか。 と言うよりかは、本人がいるからこそ伝えられないのか。

 そもそも、伝えてどうするのだろうか? 少し考えてみた。

 …………。

 盲点だ。 その後を考えてなかった。

「お」

「ねえ」

「れ」

「大事な話だって言うから、一端アイス舐めるのやめてるんだけど」

「に」

「こんなスローペースじゃ溶けてベタベタになっちゃうよ」

「は」

「聞いてるの?」

「彼女がいない!」

 べしゃり

 固形物が潰れる音がした。

 鮮明なフローラルアートの絨毯に目立つ物がちょこんとひとつ。

 それがハナの手からすっぽ抜けた物であると気づくのに、少々時間がかかった。

 どうでもいいことだが、何故時間がかかったのか、確実に述べられる理由がひとつ。

 自分の発言に驚いたからである。

「あのさ」

 次に繋がる言葉は「代わりのアイスを買ってこい」なる命令に違いない。 どうやって返したものか、ひどく悩む。

 「何故おれに言う?」などと疑問の意を表しても意味がない、大声を出してしまったのはおれ自身なのだから。 (結果的に)おれが脅かしてしまったのが悪い。

 だが素直に買いに行こうともハナのことだ。 おれが貧乏人だと知ってて尚、某ガリガリアイスの値段の約三倍はするであろう高級アイスを買ってこいと命じてくるかもしれない。 それだけは絶対に避けたい。

 千通りの返答方法を考えていたおれに向かって、ハナは淡々と喋り始めた。

「子供のころ、深夜に起きて、トイレに行こうとして、」

 途中でハナは席を立ち、どこからともなく雑巾とティッシュ箱を持ってきて、

「明かりのない部屋から両親の声が聞こえて、思わずそこを覗いてみたら、」

 絨毯の上に乗る冷えた発光体を数枚のティッシュで拭き取り、徐々に広がる染みを雑巾で拭いては、

「自分の両親が交わり合う愛の空間に直面した、」

 縦に「あたり」と表記された棒を拾いつつ、

「そこで、キミはどうする?」

 脱力する、もしくは拍子抜けするほど予想外な言葉を放ってきた。

 というか、意味がわからない上にワケがわからない。 話の内容が掴めないし、何を思ってこんなことを聞いてきたのか、見当もつかない。


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