幼馴染みの定義-10
「そのときからキミが嫌いになり始めた」
腹の中が吹雪いてるかの如く絶対零度以下の冷たさを感じる。 夏の雪は恐ろしい寒さを誇っていた。
「はい、おわり」
自分が言った『酷い奴』とは、言わずもがな。
「ほんと馬鹿だよね。 幼馴染みだけは特別だって思い込んでて、実は全く違うの。 ひとりで空回りしてただけじゃん」
言い返す言葉がなかった。 探す気にもなれなかった。
おれは男子だけが友達だった。 だから幼馴染みですら切り捨てた。
自分を殴りたくて堪らない。 しかしそうしたところで解決はしないと、自分自身がよく知っている。
最低だ。
「ワガママで悪いけどさ、もっと特別視してほしかったなあ」
「すまん」
「はあ、好きだったのに。 これだからヒロインになりきろうとしてる自分が嫌いなんだよ、結局現実は現実でしかないのに」
「すまない」
「なんかすっきりしたよ、アイくんに話せて良かったと思う。 さっきはごめんね、酷いこと言っちゃって」
「ごめんなさい」
「やめてよ、そう言うアイくんは好きじゃないって」
「ごめんなさい」
いつの間にか、おれは泣いていた。
どんなに引かれようが、一度決壊したダムは簡単には直らない。 涙が止まらなかった。
「お願い、やめて」
「ごめん」
「今更謝っても、何もかもが遅いの」
「ごめんな、ハナ」
関係が戻せなくても、信頼が取り戻せなくても、許されなくても、本当に、それはどうでもいいことだらけで、おれは謝り続けた。
何に対して? ハナの気持ちに対して。
「最後の最後まで笑わせられなくて支えられなくて、ごめん」
目を瞑った瞬間、完璧に世界が暗転し、一回も口を付けなかったアイスが手元から離れていった気がした。
耳に何か柔らかいものが触れる。