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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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ジャム・ジャム・ジャム-7

「取っ手を引いた瞬間、バーン! なんてごめんだぜ」
「その可能性はあるけど……ま、行ってみましょうよ」
ダナが言った。
「ウエイトレスの子の情報、信じてみてもいいンじゃない?」
「いずれにせよ、既に手がいてるのは確かだろうけど」
エイジも頷いて、そっと取っ手に手をかけた。
「こんな辺鄙なところに大袈裟な罠を仕掛けることもないだろうしな」
ごくり、と二人が息を飲む。
「よッ」
エイジがぐっと力を入れ、一気に取っ手を引いた。
沼に沈んだ他の船と同様、この戦艦であろう金属板にもところどころに赤錆が見える。
入り口も多少錆び付いていたが、エイジが少しばかり力を入れただけですんなりと開いた。

「行けそうだな」
エイジは中を覗き込み、飛び降りることができる高さかを確認すると、ダナに目配せした。
そしてひょいと、船の中へと身を躍らせる。
「さて、アタシも」
言って、ダナが足から船の中へ入って行く。
しかし。
「エイジ! 大変よッ!!」
ダナが声を上げた。
「どうした!?」
「身体がつっかえちゃって、入れないわ!」
がく、とエイジが思わず脱力する。
五十センチメートル四方の入り口は、ダナの鍛え上げられた上半身が入るには些か狭く――二の腕が半分入ったところで、身体は入り口に固定されてしまっていた。
「こんの筋肉ダルマがッ」
エイジが舌打ちして、すぐさまダナの足を掴むと、ぐっと力を入れて下に引いた。
すぽん、とダナの身体は入り口から抜ける。
「どわッ」
「あらッ」
不意に抜かれたために、ダナはバランスを崩してエイジを下敷きにしりもちをついてしまう。
ダナがあらやだ、と口元を押さえた。
「大丈夫? ごめんなさいねェ」
エイジの腕を掴んで彼を起こさせると、ダナが笑った。
「やだわァ、アタシってば胸囲があるもンだから」
「………」
エイジは横目でそんなダナを見やり、小さく息をつく。
そしてさて、と気を取り直したように携帯用のライトを取り出した。
「暗いな。どこに罠があるか分からないから、気を付けろよ」
「オーケー」
ダナもライトを取り出して、灯りをつける。
船が斜めに沈んでいるせいか、彼らの歩く廊下や船室は緩やかな傾斜になっていた。
「地下に行くのにこの坂を上るっていうのは、妙な感じね」
倉庫に続く階段へ向かうべく、斜めになった廊下を上る。
エイジのコツコツというブーツの音、ダナのペタペタという裸足で歩く音が廊下に響いていた。


第3章 あたしの名前は……

「!」
少しばかり歩いたところで、ふとエイジが足を止めた。
「どうしたの?」
「今、何か聞こえなかったか?」
エイジがとある船室の前でダナに問う。
ダナは彼の言葉に肩を竦めて首を横に振った。
顔を見合わせ、二人は耳を澄ませてみる。
ジャラ……
「!」
金属音――鎖か何かの音だろうか。今度は二人の耳にはっきりと聞こえた。
(誰か、いるのか?)
もしかしてこの船をアジトにしている海賊だろうか。
エイジはそっと船室の扉に左手をかけ、右手でホルスターの得物を掴んだ。
そして鍵がかかっていないことを確認し、一気に扉を開ける。
「!!」
沼に沈んだ船の中は廊下と同じように真っ暗の筈だが、しかしこの部屋は奇妙な薄暗さを湛えていた。
沼の上澄み部分にちょうど良く位置した窓から、ぼんやりとした光が入ってくるせいか。
その明るさのおかげで、二人はこの扉の奥に何があるのか、即座に判断できた。
「女の子!?」
薄明かりの下、一人の少女が倒れていた。
ダナが慌ててその少女のもとへ駆け寄る。
エイジもすぐにダナの後を追った。


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