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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈風神篇〉前編-7

「聖!」

「サルス、自分その姿どないなってんねん?」

「カルサと代わった。それより結界を頼む。」

聖は完全に理解はできなくても後回しにして結界を張ることにした。部屋の外に出て、民が集うこの部屋に集中し結界を張る。

念の為と二重、三重にしていくのを貴未は見ていた。作業が終わった聖の下へ近づいていく。

「さすがだな。」

「いや。」

そう交わすと二人は空が見える場所まで歩いていく。薄暗く不気味な空、何度見上げても変わることはなかった。

「カルサの結界が城を守っとる。せやけど、遠征でやったオレらの結界は確実に破られとる。」

「まじかよ…。」

「せやから…あかん言うてんねん。」

聖の怒りのこもった声は貴未を驚かせた。固く握られた拳、滅多に見せない強い感情は不安さえも巻き起こす。

やがて聖は足を進め、貴未に背を向けて歩き始めた。

「聖?」

「行かなあかんところがある。自分もはよ行き。」

背中で答えた聖を貴未は見送ることしかできなかった。そして自分の向かうべき場所に向かう。走っているとどこからかマチェリラが姿を見せずに声をかけてきた。

「貴未。」

「マチェリラ、そっちはどう?」

「まだ城内に侵入された痕跡はないわ。大丈夫。ただ気になる事がいくつか。」

マチェリラの言葉に足を止め、貴未は自分の私室へと瞬間的に移動した。貴未の合図でマチェリラは姿を現す。

薄紅色の床までついた長いスカートを揺らしながらマチェリラは貴未の前に立った。

「お疲れさま、それでどうだった?」

マチェリラの顔は厳しい。

「瑛琳に会いに行ったのよ。そしたら彼女は風神の傍にいて。そこで聞いたの。」

マチェリラは貴未に、レプリカが環明の存在を知っていたこと、リュナの様子が思わしくなかったことを伝えた。

マチェリラの記憶を見た貴未には環明が誰だかは分かった。だから浮かんだ疑問がある。

「環明って人は太古の風の力を操る神官だろ?風神の基になってる人なら別にリュナの衛兵であるレプリカが知ってても不思議じゃないけどさ。」

貴未の言葉にマチェリラはゆっくりと首を横に振った。

「瑛琳が言うには御剣といえど太古の存在は知らされていないらしいわ。」

太古の存在を知らされていないなら、初めの風神の名前やどういう人物かなんて分かるはずがない。まして、最初の人物は神官であって神と称されることはなかったと続けた。


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