真夜中のメロディ-5
少女は絶望した。
少年は絶望した。
探していたのに。
あんなに探していたのに。
見つけられたのは、
つまらないまがい物の月。
くだらない隔たりの大きさ。
少女は涙した。
少年は歯をくいしばった。
見つけられないのか。
♪
ギターが鳴り止んだ。
オレの拍手が、静寂を破って辺りに木霊する。ソイツは、やや照れた表情を浮かべていた。
「…良い声だ…それを皆に聴かせてやれ。オマエはこんな所で歌ってるヤツじゃない」
「…ありがと…あの…ゴウさん」
照れ笑いを見せるソイツに、オレは笑みを向けた。
「良い顔だ。実にチャーミングだ。……ところで、オマエの名前は?」
ソイツは満面の笑みを湛えながら答える。
「……ユカ…」
「ユカか。じゃあ、待ってるぞ」
オレは右手を差し出す。ユカは躊躇しながらも手を握った。
そして、笑みをオレに向け、
「…ありがと…ゴウさん……」
この日。
オレとユカの激しく、短い繋がりが始まった。
…「真夜中のメロディ」完…