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真夜中のメロディ
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真夜中のメロディ-1

ー零時ー


街の中心にある私鉄駅。
周辺の繁華街に近いためか、終電近くになっても人が途切れない。

キャメルを吸いながら、オレはソイツらを冷めた目でやり過ごしていた。

タバコを消して人ゴミから視線を外す。

「じゃあ始めるか」

オレは大ぶりな声で、となりの相棒に合図する。

相棒は笑みを浮かべて大きく頷くと、〈ハイッ!〉と、大げさに声を張り上げた。

ヘルメットを被り、薄い革手袋を着けて、駅舎の側壁そばに設置した高所作業車に乗り込んだオレ達は、昇降レバーを操作して昇って行く。
相棒の手には、幅3メートル、長さ5メートルあまりの広告ポスターが巻かれて大事そうに抱えられていた。


広告張り。それがオレの仕事。


樹脂シートにプリントされた様々な広告を、広告塔に張り付けていく。




ー2時間後ー

「…終わった…」

広告塔のフレームに、固定ロープで結わえられたシートは、シワも歪みも無く、女優が笑みを振る舞っている。

オレと相棒は作業車から降りると、少し離れた場所から貼った広告を眺めた。

「…良いですね…」

相棒は、オレに顔を向けて満足そうに語り掛けてくる。対してオレは広告塔を見つめながら、

「そうだな」

そう言って頷いた。

ふと、周りを見る。
辺りは先ほどまでの賑わいは消え失せ、静寂に包まれていた。

(…片付けて帰るか……)

相棒にその旨を伝える。


その時だ。


わずかに弦を爪弾く音が耳に飛び込んで来る。オレは相棒と帰り支度を整えながら、

(…夜中にギターを弾くとは。どこのバカだ!)

そう思い、音の聴こえた方向に目を凝らした。すると、100メートルは離れているだろうか。外灯の下にしゃがんだ人らしきモノが浮かんで見えた。

(…この寒空で、ご苦労なこったぜ……)

どうせ夢見がちなガキの戯れと、タカをくくっていた。


だが、オレの思惑は見事に外れた。


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