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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第22章-5

結局、自分も残るといってきかなかった慶介も含めて、飃と私は居間でこの一年の近況(と言うほど最近のことばかりではなかったけれど)報告をした。飃の妻になることを承諾したこと。武器を手に入れ、二人して戦ってきたこと。詳細を話すことはしなかった。厳しさを増す午後の日差しを背中に受けても、ノースリーブの上に羽織った長袖の上着を脱ぐこともしなかった。そこに現れる傷跡は、老いた祖父の心痛を増やすだけだと知っていたから。

「信じられねえ。そんなの、マンガの世界じゃねえかよ…。」

それまで静かに話を聴いていた慶介は、私の話がひと段落したその時に、ぽつりと言った。それでも、その場に居る誰もが、私の語ったことを真実だと知っていた。娘を狗族に嫁がせたおじいちゃんだって、今までに起きたこと、これから起きるであろう事を疑う気は無いということを、私はその表情から読んだ。重く沈んだその場の空気に、抗うように慶介が声を上げる。

「本当なわけないじゃねえかよ!爺(じじ)ぃも真面目な顔して聞いてんじゃねえよ…なぁ…。」

「本当のことじゃ。」

おじいちゃんは、それだけ言った。長い間、おじいちゃんの下で槍術を習い、第二の親のように彼を慕っている慶介にとっては、その一言はどんな真実よりも真実だった。何より、お爺ちゃんがこんな冗談を言うはずがないということは、わかりきっていることだ。

「なんだよ…。」

慶介が、失望したような顔で私を見た。そして、その隣に座る飃のことを。

「お前は…!それで納得できるのか?満足なのかよ!違うだろ!」

確かに、飃に出会う前の私には、ごく平凡な、生活を送り、人並みに夢があった。今の生き方が私の理想な訳がない。でも、それを合えて口にすれば、飃が自分を責めてしまうような気がしてあえて口にしたことはなかった。それをここに来て、一体こいつは、私に何を言わせたいっての…幼馴染ならではの遠慮のなさにすこしイラつく。

「それは…私が満足かどうかは、あんたが決めることじゃない!」

「お前が満足そうにしてりゃあ、おれにはわかるんだよ!」

がみがみと言い争う私たちの勢いに押されないのはおじいちゃんだけだ。なにしろ大昔からこんなやり取りを見てきたんだから。

慶介は、いきなり飃のほうを向いた。いや、睨み付けた。

「それに隠してるけど、お前の腕だって傷だらけだ…おっさんと結婚して、そいつに付き合って意味の無い戦いで殺し合いやって…お前はちゃんと、自分の人生を生きてるのかよ?」

ほんとにこいつは!いっつも兄き面して余計なことを…!

私のほうが16日分年上なのに。

「それがあんたに関係あるの?私の人生にあんたが口を出す理由があるわけ!?それに、意味無いってどういうこと…!何も知らないくせに!!」

思わず口をついて出た厳しい言葉に、内心しまった、と思いながらも慶介をじっと睨みつけていた。答えに窮した様に見えた慶介が、ボソッと言った。


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