保健室の小さな魔法-6
自分の気持ちをキチンと相手にぶつけなきゃ。
私は私のペースで。
悠にちゃんと伝えていこう。
悠の顔を見ながらもう一度言う。
「好き」
「…うん」
悠の笑顔につられて私まで笑顔になる。
「まぁ、オレの方が奏子のこと好きだけどね」
悠が得意気に言う。
「…たぶんね」
「あ、そこは『私の方が好き!』って言わなくちゃダメなとこなんだけど!」
悠が必死に言う。
そんな恥ずかしいノリについていけるか!
「そんなこと知らない」
私が照れて立ち上がると後ろから抱きしめて、
「…いつか言わせてみせるから」
耳元で低い声で囁く。
「もう!耳元で囁かないでよね、弱いんだから」
私が叩く真似をすると、悠は笑ってヒョイッと身軽によけた。
「じゃあまたね」
悠が最高の笑みだけ残して、ガラガラ…と保健室の扉が閉まる。
再び保健室に静寂が訪れる。
でもさっきのような心のモヤモヤはきれいになくなっていた。
それどころか、心が温かい。
まるで魔法をかけてもらったかのように…。
私ってこんなに現金だったかなぁ…。
でもこんな自分も大切にしたいと思う。
私は白衣をたたみ、保健室に鍵をかける。胸に残る温もりと、自分の小さな変化に、少しだけ笑いながら――。