ヒトナツD-1
「なんだよ、また二人で出かけんのか」
「そうよ、何か問題でも?」
「……ねーけど」
「じゃあ行ってくるわ」
「はいよ」
「………」
あー、つまんね。
あれから渚と桜はほぼ毎日のように二人で出かけるようになった。
仲良くなるのはいいけどよー。
俺は暇なんだけど。
「バイトでもやるかなー」
と言いつつベッドでいつまでもゴロゴロしている。
「夏休みも、もうすぐ終わりか」
うだるような暑さは続いていたが、刻一刻と夏の終わりが迫ってきていた。
***
「桜、これなんかどうかな」
「いいですね!」
渚と桜の二人はウィンドウショッピングを楽しんでいた。
「それにしても健吾のやつ、やさぐれてたわよ。一人でつまんないって」
「……」
「そろそろ遊んであげないと」
「でも……私は……」
なぜか眉をひそめる桜。
「なに?健吾に飽きちゃった?」
渚はニヤニヤと笑う。
「そっ!そんなことないです!」
「……」
「……でも」
第五話
蝉の音
「おかえり、渚」
「……ただいま」
ん、なんか元気ねーな。
いつもなら即、今日の出来事をマシンガンの如く話し始めるのに。
それがまた厄介で、弾の補充が全くないんだよな。
小一時間、渚は止まらないはずだが。
「桜と喧嘩でもしたのか?」
「え……なんにも」
そう言って俺の横をすり抜けて居間に入っていく渚。
「……なんにも?」
俺は特に気にもとめず苦笑いした。
***
おかしい。
今日は出ていかねーのか。
今の時間だとバタバタと準備をしているのだが。
「渚、今日は桜と遊ばねーの?」
居間でゴロゴロしている渚に声をかける。
「ん?……今日は健吾に譲ったげる」
「……」
まあいいや、桜に電話電話。