第3会議室…3-2
「泊まりで決定ね。1人でいさせられないから」
車が走り出す。
何だか…松本さんの一言一言に、安心させられっぱなしだなぁ。
…こういう人だと思わなかった、っていうのが正直な感想。
確かに美人で、仕事もできて、男からはもちろん女にも人気があるのは間違いない。
ただ見た目とか、仕事だけじゃなくて、こういうところも人気があるひとつの要因なんだろうな、ってあたしは確信した。
「…松本さんって女の子にモテませんか?」
「何言い出すのよ、急に」
クスクスと笑いだす松本さん。
あたしは思っていたことを口に出したのが恥ずかしくなって、思わず外の景色に目をやる。
…言わなかったら良かった…変な人だと思われたかな。
「…で、どうしてそんなこと思うの?」
「いや、えーと…あたし、松本さんはもっと冷たい人なんだと思ってました…」
「ふふ…正直ね」
「い、いや、そういうわけじゃっ…」
その言葉を言いながら、景色を見ていたあたしは、松本さんの方を振り返る。
ちょうど赤信号に出くわして車が停まり、松本さんもあたしの方を見ていた。
「モテるっていうか…女性を抱くことはある…かな。
そういう人は気持ち悪い?
帰りたくなった?」
不安そうに、あたしの顔を覗き込む。
…そんなわけ、ない。
なぜだか、あんなことをされたあとなのに…あんなひどいことをされたあとなのに。
松本さんを見てドキドキしてしまっている自分がいる…
「信号、青ですっ」
これ以上見つめられたら自分がおかしくなってしまいそうになるほどドキドキしたから…
「あ、本当だ」
って何、意識してるんだろう…
あたし、おかしいよ…
あたしは再び窓の外を眺める。
今日だけは忘れられそうな気がした。
…あんなことをされても、まだ気持ちが離れることのない部長のことを。