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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!U…C-1

ベンチ前。全ての選手の背中に向けて、永井は言った。

「…オマエ達にとって最後の大会だ。自分の3年間をぶつけてこい!」

選手達は〈ハイッ!〉と声を張り挙げる。

「集合!!」

主審の右手が挙がる。
両ベンチの前では、今や遅しと待っている選手達が、一斉にダッシュでホームベース上に並ぶ。

瀬高中学校 対 青葉中学校。

2ヶ月前の出来事がお互いに甦る。

逆転サヨナラで勝った瀬高は、勢いのまま地区大会を制した。
県大会でも準々決勝まで進み、このひと夏で著しい成長をとげた。
彼等の、青葉中を見る目は臆する様子も無く、むしろ格下を迎えているようだ。

対する青葉は雪辱に燃えていた。敗けたとはいえ、自分達の野球が瀬高中に劣るハズは無いと思っているからだ。
特に途中欠場した、キャプテン信也とキャッチャー山崎は。


〈ナメられたまま終わらせたりしない〉


静かに、しかし強く燃えていた。

一礼の後、瀬高中の先攻で試合は始まった。

青葉中の先発ピッチャーは青木。まっさらなマウンドに置かれたボールをグラブで掴むと、歩幅を測る。

プレートから6歩半。

青木は、スパイクの爪で土を掻いて浅目に窪みをつける。プレートに両足を乗せ、ホームを見つめるその先には、山崎がミットを低く構えてる。

青木は左足を1歩、プレートから後に下げ、胸元で両手を合わせると身体をわずかに反らした。

〈フッ〉と強く息を吐く。

左足を深く折り畳んで後方へ捩り、長身の身体を屈める。
捩りの動きが止まった瞬間、左足は宙を蹴って前へと伸びていく。

半身を起こし、左手がホーム側に伸びる。左足が窪みに埋まり、土が飛び散る。
身体の捩れに、腰の回転を加えた力を右手に込めて、青木は外旋回で腕を振り抜いた。

サイドハンドから投じられたボールは、わずかなシュート回転で山崎のミットを揺らす。

乾いた音が響いた。

(いい回転だ…)

山崎の掌に、心地よい痺れが生じる。キャプテン信也のように、キレとコントロールが信条でなく、ボールの威力で勝負する青木の球。

山崎は立ち上がり、大きく頷きながら青木にボールを返した。


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