投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 118 やっぱすっきゃねん! 120 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!U…C-2

「…いいボールだ……」

スタンドで見つめる一哉が呟いた。となりで聞いた佳代も頷いて、

「青木さんのボール、伸びてますね」

「ああ、上下のバランスが良くなったな」

返答する一哉は、青木から目を離さない。その表情は穏やかだ。
佳代は、そんな一哉を見て嬉しくなる。

「コーチ。賭け、しませんか?」

あまりの場違いな発言に、一哉はサングラスを外して佳代を見た。ニコニコと笑っている。

「突然、どうしたんだ?」

「今日、ウチが完封したら私の勝ちって事で…」

一哉は佳代を見て内心驚いた。〈完封したら〉と言っている。地区大会で敗けた相手に、点を奪られるはもとより、敗けるなど未塵も思っていない。

一哉はサングラスを掛けながら、苦笑いを浮かべ、

「カヨ。オレはコーチだぞ。点を取られたらオレの勝ちなんて、そんな賭けには応じられんよ」

佳代は頬を膨らませてグランドを見つめ、

「ちぇっ、いい考えだと思ったのに…」

一哉はそんな佳代をチラッと見ると、

「…そうだな。10点差で完封なら乗ってやらんでもないが…」

途端に佳代の目が輝く。

「10点差ですね!やります!」

「で、何を賭けるんだ?」

佳代は〈う〜ん〉と唸っていたが、すぐに笑みを向けると、

「じゃあ、三洋軒のラーメン!3人前で」

「ラーメンは分かったが、何故3人前なんだ?」

「それは…」

佳代はチラリと尚美と有理を見ると、いたずらっぽい顔を一哉に向けた。

「私と友達2人の分です!」

そう言って尚美と有理を指差した。途端に2人は焦った顔で、

「ちょ、ちょっとカヨ!」
「私達はいいわよ!」

だが、佳代は聞く耳を持たずに、〈いいから、いいから〉と手をひらひら振って、

「良いでしょ?コーチ」

一哉は再び苦笑いを佳代に向け、

「オマエには負けたよ…」

「ヤッタ!10点差で完封ですよ!」

「分かったよ…」

一哉は小さく頷くと、再びグランドに視線を戻した。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 118 やっぱすっきゃねん! 120 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前