全てを超越『6』-4
荷物を後部座席に山ほど積んだ車を転がして、春子の家の前で停める。インターフォンを鳴らすと、おばさんが出た。春子はまだ帰ってないらしい。
「ごめんなさいね、春子ったら」
「いえ、いいッスよ。これくらい」
相変わらず、デカい。間違いなく、春子の身長はおばさんからの遺伝だ。この辺りで一番背の高いマダムは疑いなくおばさんだ。
「春子ったら、今日スゴく楽しみにしてたのよ」
ただ、性格はスゴく優しくておしとやかな人だ。ウチとは大違い。
「あの子、実はずっと前から一太郎くんの事、好きなのよ」
秘密をこっそり暴露するように、おばさんはそう言った。
はい、知ってます。さっき聞きました。
「もし一太郎くんに彼女がいなかったら、考えてあげてね。私も一太郎くんみたいな息子が欲しいし」
「……あ、あはは」
はぐらかしつつ、俺は車に乗り込んで……逃げた。男らしくないと思うなら、そう思え。
ただ、今の俺にはそうするしかなかったんだ。
俺の事が好きな二人の女の子。
俺は、どっちを向けばいい?
いくら考えても、答えなんざでやしねぇ。
はぁ……。
続く。