松本梨絵のとある一日。-2
「この人、痴漢ですっ!!!」
その声に周りの人たちがバッと振り向き、男は松本から手を放すが、もう遅い。
男は周りの勇敢な金髪やら茶髪やらのお兄ちゃんたちによって取り押さえられたのだった…
「あ〜もうっ!朝から最悪!」
「そりゃ〜最悪ですね…」
今日のあたしのランチのお相手は、秘書課の可愛い後輩の坂下麗(さかしたれい)、29歳。
あ…年ばらしちゃった。
ごめん、坂下!
「痴漢なんて、わたしされたことないですもん」
「あたしもされたことなかったわよ。
ああ、何でもっと早くこの人痴漢ですって言えなかったんだろう…
あたしとして、これは人生の汚点だわ」
「あはは〜確かに言えてる」
「笑い事じゃないわよ、自分で気持ちいいとこをお互い主張しあうのがセックスだし。
あんなの女をバカにしてるわ」
「痴漢かぁ…
でも好きな人にならされてもいいと思いません?」
と坂下が冗談っぽく言うので、ごほっ!とあたしは飲み込みかけたハンバーグをのどに詰まらせた。
雪人…あんた坂下にどんな調教してるわけ?!
雪人とは、うちの会社社長の金澤雪人(かなざわゆきひと)。
あたしがむかーし(ここ強調させてもらうわ!)好きだった人。
高校の頃の同級生で、まあ、会社入ってからは寝たこともあったりなかったり…
「坂下…相当雪人に教え込まれてんのね」
「ええっ?!」
そんなにびっくりしなくても。
可愛い後輩だわ。
「雪人と、痴漢プレイまでしてんの?」
「ゆ…ゆ、雪人…?
社長のことですか…?」
「うん。
あたし、雪人と高校の時の同級生だからね。
…いつも会社にお泊まりみたいだけどちゃんとベッドで抱いてもらいなさい?
じゃないと、坂下の体もたないわよ」
顔を真っ赤にしている坂下にあたしは笑ってしまった。
…でも、最近この2人はHしてない気がするんだけど?
帰る前に社長室覗くのがあたしの日課なのよね(やっぱり悪趣味)。
なんて考えてたらあたしがドキドキしてきちゃったじゃない!
ああ…禁欲生活なんて耐えられないわ。
…H…真鍋としたい。
そんな日の夜は…
やっぱり残業に限るわ。