明日になれば…-3
「勘違いしないでくれ。オレは普通の人だ。君が辛そうな顔してるから助けたいんだ」
圭子はホッとすると同時に、怒りが込み上げて来た。
「あっちに行ってよ!アンタなんか相手してるほど私はヒマじゃないの」
橘はしゃがみ込み、笑顔で彼女を覗き込むと、
「それより腹減らないか?メシ食いに行こう」
そう言うと彼女の腕を取り、立たせてファミレスへと連れて行く。圭子は〈何すんの!放せ!〉と叫ぶが、男の力にはかなわない。かくして橘と同じ席に座る事になった。
席に座ってソッポを向く圭子。
橘はそれを見て〈この娘は大丈夫だ〉と思った。本気でイヤなら逃げ出している。
橘はメニューを見ながら、
「オレは…そうだな…和風ハンバーグとライスにするかな…君は?」
メニューをケイコに渡す橘。彼女は無意識にメニューを受け取るが、次の瞬間、橘の顔をまじまじと見ながら、
「おじさん私と寝たいの?」
橘は笑みを浮かべ、
「バカ!オレはメシ喰う相手が欲しかっただけだ」
そう言うと、メニューで圭子の頭をポンッと叩く。
「じゃあ…私、オムライス頼んでいい?」
圭子の言葉に橘はにっこり笑って、
「ああ!一緒に食べよう」
橘はウエイト・レスを呼び寄せ、料理を注文した。
*****
「何処から出て来たんだ?」
食事の後、橘はコーヒー、圭子はメロン・ソーダを飲んでいた。
「〇〇町…」
「〇〇町って…〇〇市のか?ずいぶん離れているな。いつから出て来たんだ?」
圭子はメロンソーダに視線を落としたまま、問いに答える。
「……3日前…」
「じゃあ3日間、お金はどうしてた?」
「援交やってホテル泊まってた…昼間は、貰ったお金で遊んで…だから、おじさんも最初〈そういう奴ら〉かと思った。その恰好だし…」
橘は含み笑いを浮かべながら、
「悪かったな。〈怖そうな風貌〉で」
圭子も橘の笑っている顔を見て〈フフッ〉と少しだけ笑った。
橘はそれを見ると、柔和な表情で、
「そう、それで良い。とてもチャーミングだ。さっきまではまるで〈世の中を全て疑っている〉ような目だったよ」
その後、2人は夜が明けるまで話し合った。