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明日になれば…
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明日になれば…-25

「彼女が禁断症状から脱しました!」

「本当ですか!!兼坂さん」

橘が先程とは打って変わり、嬉々とした声を挙げる。

「本当です。いやぁ、私も色んな中毒患者を診ましたが、こんな娘は珍しい。あれから1週間程して意識が戻ったのですが、とにかく素直で。
こちらの説明と治療方法を素直に受け入れて、禁断症状にも必死に耐えたんです」

兼坂はやや興奮気味に、これまでの経緯を一気にまくしたてた。
それを聞く橘は、止めども無く溢れる涙を拭おうともせず、ただ兼坂の言葉に相づちを打つのが精一杯だった。

「もう大丈夫です。私はアナタとお会いした時、大変、失礼な事を言った。心から謝ります」

「…?…」

「あの時、私は〈社会復帰は難しい〉と言いました。撤回します。彼女の素直さと気持ちの強さがあれば十分可能です」

「先生…あ、ありがとうございます…」

声にならない声。橘には、それだけ言うのが精一杯だった。

「ちょっとお待ち下さい」

しばらくの保留音の後、再び電話が繋がった。

「センセイ!」

驚く橘。それは、紛れもなく春菜の声だった。それも、入院前に聞いた弱々しい声とは違う、弾んだ声だった。

目を真っ赤に腫らしながら、笑みを作る橘。

「春菜!良く頑張ったな…」

「センセイのおかげだよ…ありがとう」

「何か不自由してないか?」

「全然。先生もちょくちょく来て気付かってくれるの。私が苦しい時も〈センセイが待ってるぞ〉って励ましてくれた…」

「明日にも見舞いに行くよ」

「センセイ、それはちょっと待って!」

橘の言葉に、春菜は焦った口調で言った。

「何故…?」

「だって、髪はボサボサだし…身体もガリガリで……」

橘は笑いがこみ揚げてきた。やはり女の子だ。生死の境をさまよっていたというのに。

「分かったよ。先生と替わってくれないか」

兼坂が電話に出た。

「先生、なんとお礼を言っていいか…」

「イエ、それは先程も言ったように、彼女の〈生きたいという思い〉が強かったんです。私は手助けをしたに過ぎません」

「ところで、彼女はいつ頃退院出来ますか?」


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