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明日になれば…
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明日になれば…-17

「センセイ。ヘタ打つと大変な事になりますぜ。それだけ危険です」

だが、橘の意志は変わらなかった。

「その草〇一家を紹介してくれませんか?」

「そりゃ出来ますが……私が行くとなると…」

松岡の言葉を、橘は片手で制する。

「ここからは私、1人が参ります。それ以上、松岡さんにご迷惑は掛けられません」

「しかし…」

「いえ、私達では分からなかった春菜の居場所をアナタは突き止めてくれた。それだけでも感謝の極みですし、アナタにとって相当な迷惑を被らせたと思ってます。
ですから、後は私に任せてくれませんか」

松岡は腕組みをして天井を眺める。彼が物事を思案する時のクセだ。そのままの姿勢で彼は考えたが、やがて、両ヒザを手で叩き橘を見据えると威勢の良い声で、

「分かりやした!後はセンセイにお任せいたしやす」

そう言って立ち上がると、そばの電話に手を伸ばしてダイヤルを押し始めた。

「……おう、草野さんとこかい?松岡組の松岡だが…ああ、そうだ…おめぇさんトコの組長を出してくんねえか。ああ……」

しばらくの無言の後、松岡はまた受話器に向かって喋り始めた。

「よぉ、草野さんかい?松岡だが…しばらく…」

「何か用かい?」

草野は訝かしげな声で、松岡に訊いた。

「ああ、アンタに会わせてくれってヤツがいてね。ウチの客人なんだが。会ってやってくんねえか?」

松岡の単刀直入な問いかけに、草野は一旦戸惑いを見せる。松岡は構わず続けた。

「話せば長げえんだが、客人は教師で堅気なんだ。アンタんトコの〇〇ビル。アソコに客人の教え子が居るらしくてな」

「松岡さん、なんでウチがガキを匿う必要が有るんだ?」

「実はソイツは遊んでるうちに、アンタんトコの若え者に拉致されてな。シャブ漬けにされ、客を取らされてるんだ」

「何だと!」

冷静に対応していた草野の語気が、初めて荒くなった。

「その娘が虫の息で、客人に電話して来たらしいんだ。そして、ウチの者が調べた結果、アンタんトコに居たのさ。客人はその娘を返して欲しくてアンタに会わせてくれと言ってる」

しばらくの沈黙。おそらく草野にとっては寝耳に水だろう。彼とて、構成員の全ての行動を把握しきれないからだ。

「どうだろうか草野さん?オレの顔を立てて会ってやってくれねえか」

「分かった…」

絞り出すように草野は言った。今頃、怒り心頭で般若のような顔をしているだろう。

「じゃ、センセイだけそっちに向かわせるから」

松岡の言葉に、草野は驚いた。


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