桜が咲く頃〜優しさ〜-1
ここは大笑(おおえ)
沢山の人が集まる街。
この国の中心部。
俺の名は鈴(りん)
今、大野常吉というお偉いサンの護衛をしている。
俺は大野の屋敷で生活していて、俺と同じ護衛が、俺を含め50人程いる。
ここでは、10人1グループにわかれ、1グループにつき1部屋与えられる。
食事をするのも、寝るのもこの10人なんだ。
俺は人と関わるのが嫌いだから、食事と仕事の時以外は皆といることはない。
普段は、昼間は庭の大きな木に登り、夜寝るときは裏庭に面した廊下の柱に寄りかかって寝る。
そんな俺に話かけてくるやつがいた。
名前は…たしか、あ…あい…そう、あいすけ!
山村矮助(あいすけ)と言う。
アイツはいろんな話を、勝手にやってきて、勝手に喋って、勝手に帰る。
変なやつだと思ったが、特に害はなさそうなので、放っておいた。
それがいけなかったのか…
昨日、俺は大野の護衛で出かけた。
最近雨が続き、昨日も朝から雨だった。
俺を含め6人の護衛がついていき、帰り道、突然襲われた。
そして、俺以外の護衛は皆、死んだ。
俺はなんとか大野を守り屋敷に帰ってきたが、俺自身は背中に傷を負った。
帰ってきた時がちょうど夕飯時だったので、俺は誰も来ないと思い、風呂場に行った。
傷を洗い、手当てをしようと思ったのだ。
ちょうど服を全て脱いだその時、アイツが入ってきた。
そう、矮助が。
そこで知られてしまった…
俺が、女だということを…
俺は刀をつきつけ、
『このことを誰かに喋ったら殺す』
っと脅すと、アイツは
『誰も入って来ないように見張っとくから、安心して風呂に行ってこい』
と言った。
ホントに変なやつ…
俺はアイツの言葉を信じたわけではないが、はやく手当てをしたかったし、アイツが何かしてくれば斬ってやろうと刀を持って風呂場に行った。
アイツはこの間に、俺のことを話すかもしれない。
早く風呂から出で、早く屋敷を出で行こう。
突然、戸を叩く音がした。
俺は身構える。
『鈴？大丈夫か？』
アイツの声だ。
なんだろう？と戸をじっと睨みつける。
『おい、鈴？』
声はするが、戸を開く様子はない。
なら、こっちから…
そう思い戸を開けた。