秋と春か夏か冬 番外編12、5話〜『2つの借り』〜-4
「…別に。ただ1つ聞いていいかしら?みんなが私に不満を言ってるときに……怒ったじゃない?なんで?なんで他人のために、あんなに怒れるの?」
「???なんでって…さっき言った通りなんだけどなぁ…」
さも当然のように話す秋津 恭介。
「それじゃぁ納得できないから聞いてるんでしょ!」
「もう少し詳しく話すとだなぁ……最初は100m走のタイムだな。
あれで俺と同じようなタイムだすやつがいてさ、しかも女の子……俺の方が少し速かったけど……負けた気分になったよ。
んで、面白いヤツだから観察してると次は……あれかな?」
そう言って指をさす。その先には花瓶。
(私がいつも水を取り換えてるやつ…)
「何回か、朝早くに来たとき見かけたから気付いたけど…お前が取り換えてたんだな。
だからかな?みんなが言うほど…悪いやつじゃないって思ってた」
「……それだけ?」
「それだけって…失礼だな。俺の直感は当たるんだぞ。それに悪いやつじゃないって思ってたのが、いま話してて、確信に変わったよ♪」
他人のことを笑顔で話す目の前の男。
「…変な人」
私は呆れて少し笑ってしまう。
「おっ、初めて笑った顔を見た気がする。良いじゃん♪そっちのが絶対イメージ良いぜ?」
「ぅ、うるさいわね!さっさと決めて帰るわよ」
そう言って少し照れながらメンバー表に選手を書き込む。
「北条院はさ…美人な分、無表情だと怖いイメージなんだよ。だから笑ってた方が良いと思うけど?」
「…だって何もないのに笑ってたら…バカみたいじゃない。あんたみたいに」
「はぁ〜…意外と口が悪いのな。もしかして俺…嫌われてる?」
「…別に。ただ醜い人間が嫌いなだけよ……外見も心もね。まぁでも……女の子には優しく接するようにしてるわ」
「ふぅーん。だからか…モテるのに彼氏とか出来なそうだもんなぁ〜」
「黙りなさい」
「冗談だって。そうだ!体育祭が終わったら俺の親友を紹介してやるよ♪きっと気に入るぜ♪♪」
「…考えとく」
この男…秋津 恭介の親友と言うからには、悪い人ではないだろうと……私はなぜか思った。
「すごい良いヤツだからさ♪北条院も……てか下の名前なに?」
「…鈴音」
「じゃぁ呼びにくいから鈴な!鈴って呼ぶことにした♪鈴も恭介で良いよ」
「あんたが呼ぶのは…まぁ百歩譲って構わないけど、私が呼ぶ理由がないわ」
「だって俺だけじゃ不公平だろ?それに同じ実行委員のパートナーだし」
なんなのそれ。
わけがわからないことを言ってくる。