秋と春か夏か冬 番外編12、5話〜『2つの借り』〜-2
ガラッ。
「遅刻してすいません!寝坊しました!」
勢い良く教室に入ってくる男が1人。
「おぃおぃ秋津…もう3時間目だぞ…寝坊にも限度があるだろ」
先生が呆れながら注意する。
「ですから……いや、言い訳はありません」
「うむ。その潔さを評価して、お前を体育祭の実行委員にしてやる」
「ど〜も♪……って先生?いま実行委員って?」
「あぁ。そうだ。遅刻ぐせも直せるし、人望もあるから一石二鳥だ。運動神経も抜群だしな♪」
先生が言うと、クラスの人たちが囃し立てる。
『恭介ならぴったりじゃんか。頑張れよ〜』
『きゃぁ秋津くんが実行委員だって!』
とうの本人は…
「はぁ…わかりました」
遅刻したため言い返せず、了承していた。
この遅刻してきた男は秋津 恭介。
背が高くて運動神経抜群、明るい性格と、ある意味で嫌味な男。
そのせいか…よく人が集まり、クラスの中心にいるようなヤツ。
おまけにカッコ良くてモテるみたい……私のタイプじゃないけど。
まぁそんな人が実行委員に決まったから、女子は大騒ぎ。
さっきまでとは違い、我よ我よと実行委員に立候補する。
(…くだらない)
私はただ秋津 恭介を観察していた。
「これじゃキリがないな…秋津、女子の実行委員をお前が選んで良いぞ」
先生が言う。
秋津 恭介は辺りを見渡している。
バチッ
私は思いきり目があう。
「先生。俺は北条院が良いです」
…は?
辺りが静まる。
……なんで私なのよ…。
だんだんと周りがザワついてくる。
『おいおい…北条院だってよ。俺あいつ苦手なんだよな〜』
『なんで北条院さんなんか選んだのかしら』
『あいつ冷めてるし、そんなヤツに命令されたくね〜よ』
みんなの不満な声が聞こえてくる。
…喋ったことのない人達に、私の何がわかるんだか……。
こんな時、怒りよりも冷静になってしまう自分は、やっぱりどこか違うのだろうか?