Music Life #0-1
桜舞う4月。ここは都内の某大学。キャンパスは、これからの大学生活に胸を踊らせる新入生のうわついた空気に包まれていた。しかし、その空気に馴染めず、一人静かな場所を求め校内をブラブラする男がいた。
五十嵐 真人(いがらし まこと) この春からこの大学に通う1年生である。
「はぁ、いくら新歓期間だからってこの人の多さはしんどすぎるわ。」
真人はため息をつきながらぼやいた。
多くの大学では、4月の頭に部活やサークル等の新入生勧誘期間をもうけている。真人の大学も例に漏れず、各団体が小さなブースをキャンパス内のいたるところに設置していた。
「たしか3号館は屋上に入れんだよなぁ...」
他の学生がそんな話をしていたのを思い出した真人は、3号館に向け歩きだした。キャンパスの外れにある3号館には、さすがに新歓のブースもなく、人もまばらだ。屋上に着いた真人は、手慣れた様子でタバコに火をつける。深く吸い、ゆっくりと吐き出す。
「あぁ〜、やっぱ一人は落ち着くわ」
満足そうな表情でタバコをふかしていると、急に屋上のドアが開いた。
「君誰?」
入って来るなり真人にそう尋ねたのは...
続く