Music Life #1-1
綺麗な黒髪は、肩あたりで切りそろえられており、服装も春だというのに全体的にダークな色でまとめられていた。しかし、真人の目を...いや、心の中にあるなにかを奪ったのは、彼女の整った顔の中でも一際目立つ『瞳』だった。少しグレーがかったその瞳は、真っ直ぐに真人に向けられていた。
「ねぇ、君誰？」
彼女はもう一度真人に尋ねた。
「誰って言われてもなぁ...。だいたい、あんたこそ誰なんだよ？」
同じことを尋ねる彼女に少し動揺しながら真人は答えた。
「あぁ、あたし？あたしは月岡 琴音(つきおか ことね)ここの学生で2年生。1月25日生まれでA型の水瓶座。スリーサイズも知りたい？」
彼女は綺麗な声で、まるで歌うように答えた。
「...五十嵐 真人。1年生。っていうかそこまで聞いてね...ませんし、そもそも初対面の人間にいきなり『君誰？』なんて聞きますか？」
もっともなことを真人が言うと
「あたし、興味があるモノのことはすぐに色々知りたくなっちゃうんだ。まぁ今回は珍しく『モノ』じゃなくて『人』だったけどね。」
あっさり答える琴音。「俺に興味？」
美人に興味があると言われ、喜ばない男はいない。それはもちろん真人も例外ではなく、いままでよりも声のトーンを少しあげた。
「まぁ、君っていうか君の奏でる『音』にかな？」
「はぁ!?」
(...俺の奏でる『音』？)
続く