僕らの日々は。〜甘い、甘い?〜-4
「手の冷たさなんてその時々で違うじゃない。心変わりもはなはだしいわ」
「んー、赤ちゃんの手ってだいたいいつも暖かいけどさ。まさか赤ちゃんの心が冷たいワケないよな」
そんなこんなで、一葉の家の前まで来た。
「それじゃ、また明日ね」
「ん。じゃね」
――バタン。
結局、チョコの話は一回も出なかった。
いや、まぁ絶対貰えるって決まってたわけじゃないから、そりゃそうなのかもしれないが。
「んー、若干期待してた分だけちょっと切ないなぁ……」
独り言を呟き歩く。
……そういや昨日話に出た安良の友達は、今年も男子から本命を貰ったのかなぁ…、などと至極どうでもいい事を考えている間に、家についた。
「ただいまー」
「おっかえりー♪」
返事をしたのはウチの母親なのだが、……なんだかニヤニヤしている。
「ねぇ春風?」
「……何さ?ニヤニヤして」
「一葉ちゃんからチョコ、貰えたかな?」
「……………」
……なかなか痛いトコ突っ込んでくるじゃないか。
我が母親ながら。
「…どっちだと思う?」
「ふふ〜ん。その落ち込んだ顔見てればだいたい予想はつくわよ」
「………………」
……そんなに落胆が顔に出てただろうか。気をつけよう。
いまだにニヤニヤしながらこっちを見ている母親の視線を振り切り、僕は二階へ上がった。
「……ま、こんな日もあるか」
自室に入り、鞄を机に置いて、
――机の上にちょこんと乗った、真っ赤な小さい包みに気がついた。
「―――……っ」
包みに付いたメッセージカードには、
『春風へ from 一葉』
とだけ書いてあった。
……いつの間に、こんな。
朝家を出るときはこんなもの無かったし、帰るのは一緒だったし、……
「…………あ、そうか」
気がついた。
今朝、一葉が珍しく遅刻したと思っていたが。
あれは遅刻なんかではなく、僕が行った後でウチに寄るためだとしたら、時間的にもぴったりだ。
……ん。待てよ?
ということは……。
僕はドアを開けて一階へ。