「史乃」-6
ー第3章ー
葛藤
梅雨明けし、強い日射しと熱気に包まれる夏を迎えた。
「じゃあ行って来ます」
「ああ、気をつけてな」
史乃は、専門学校に通うべく玄関で靴を履いている。その姿を見送る寿明。
いつもの朝の風景。
「洗濯物干してるから……」
「分かってるよ。それより…」
史乃を見つめて、寿明は表情を曇らせる。
「何?」
「…ちょっと…短か過ぎないか?そのスカート」
チャコールカラーのプリーツスカートは、太股の大部分を露出させていた。
史乃は自分の姿を見つめて、
「そんな事ないよ。由美なんかもっと短いもの」
「…由美って?」
「学校の友達よ」
寿明は苦笑いを浮かべて、
「学校じゃ皆、そんな恰好してるのかい?」
「ショートパンツのコもいるよ」
史乃は、当然とでも言いたげに答える。だが、寿明は納得出来ない。
「ショート…若い娘があまり肌を露出させるのは感心しないな。それに夏になると、おかしな輩……」
史乃は、持論を語る寿明を遮ると、
「…ちょっと時間無いから行くね。話は帰ったら聞くから」
そう言って玄関を飛び出した。
「史乃待ちなさい!話は終わって…」
寿明は、玄関外まで史乃を追ったが、すでに姿は無かった。