やっぱすっきゃねん!U…B-2
「じゃあ、私がいた方が良いんじゃない?男子だけだと事が荒っぽくなるから」
佳代は、そう言うとニンマリと笑う。絶対退かないという笑みだ。
直也は佳代から視線を逸らすと小言で、
「…なにが男子だけだとだ……てめぇが1番ケンカっ早いクセに……」
「何か言った?」
「何でもねぇよ。好きにしろ!」
直也は、ふて腐れたように言い放つと先に歩き出す。こうして佳代を加えた4人は、部員説得に向かった。
「あれっ?」
最初の相手、土田のクラスへ行く途中、直也が前を見据えたまま声を挙げる。不思議に思った3人は、視線の先を追った。
するとそこには、キャプテンの信也と土田が話をしているではないか。
「土田。どうしてもダメか?」
信也の説得に、土田は堅い表情で俯いたまま口を開いた。
「すいませんキャプテン。もう野球部には戻りたくないんです…」
そう言って、頭を下げる土田。信也は、その姿をしばらく見つめていたが、
「…そうか。仕方ない……」
信也は一瞬、悔し気な顔を見せるが、すぐに冷静な表情で土田の肩をポンと叩くと、彼の前から歩き去ろうとする。
「キャプテン!」
信也が振り向くと、直也達4人が駆け寄って来た。
「なんだ?オマエ達…」
「実はオレ…私達も部員の説得に…」
直也が実兄に、たどたどしい敬語で話掛ける。上下関係に兄弟だからという例外は無い。
すると、信也は苦い顔で、
「今、土田と菅野を説得したんだが…無理だった」
「そうですか……」
信也の言葉に直也達は、これ以上は聞けなかった。
しかし、信也はすぐに明るい表情で直也達を見つめると、
「ところで、オマエ達4人で説得に行くのか?ちょっと多過ぎるんじゃないのか?」
「イヤ…最初は達也と淳の3人だったんですけど、コイツがどうしても付いて来るって…」
直也は〈我が意を得たり〉というような表情で信也に語り、佳代を指差す。