秋と春か夏か冬 12話〜『サヨウナラ』〜-2
「……何時の便か…わかるか?」
『確か13時の便って…でも今からじゃ……』
「…知らせてくれてありがとう…」
『待って恭介!僕た…』
理緒には悪いが言葉の途中で切る。
(急がなきゃ…)
俺は動かない体に鞭を打ち、無理矢理立ち上がり…部屋を出ようとする。
…が、当然杏子が制止する。
「待て…何処へ行く気だ。絶対安静だぞ。それに職業がてら……ごほん……とにかく、病人の外出は許可しない」
杏子の目は真剣だった。
しかし恭介はそれ以上に真剣だった。
「……頼む。どいてくれ…行かなきゃ……俺が行かなきゃ駄目なんだ…。
美雪が俺を理解してるように…俺も美雪の気持ちがわかる……口に出してないけど…待ってる……きっと待ってるんだ」
…しばし睨み合いが続く……そして…
「……ふぅ。お前は言い出すときりがない…」
恭介の気迫に杏子が根負けした。
「ごめん…ありがとう」
恭介は家を出て目的地へむかう。
(空港へむかうには…駅だ)
恭介は走り出した………が、その体で走れるわけがなく倒れかける。
杏子が後ろにいた。
「……ったく。手のかかるバカは好きじゃないんだが…お前の必死さには呆れる」
杏子は恭介の体を持ち上げ、車に放り込む。
「……杏子…」
「黙っていろ。確か空港とか言ってたな……よく知らんが、お前の必死さから見て…美雪ちゃん絡みなんだろう??送ってやるから着くまで寝てろ。少しでも体調を回復させとけ」
「杏子……本当にありがとう」
今日ばかりは心から感謝する恭介。
杏子の神業的な運転技術と、明らかにスピード違犯と言える速度で、空港に到着するのは恐ろしく早かった。
それでも時刻は12時20分。