年の差-番外編-9
入った部屋は、悪くなかった。
そこそこに広いし、綺麗。
ただ、相変わらず、この独特の匂いだけは、好きになれない。
ばかにでかいテレビ。
二人掛けのソファー。
カラオケだとか、お風呂などが備えつけてある。
部屋は明るく出来たり、暗く出来たりすることが可能。
しかし、ここのメインはベッド。
ダブルより少し大きく、シーツはシワ一つない。
後ろ手で引いていた北野を、目の前に連れてくる。
北野はされるがままに、目の前に立つ。
再び、北野の唇を奪う。
薄く見える唇は、味わってみると意外と厚い。
柔らかく、吸い込まれるような感じ。
上唇を啄む。
やはり、さっきと同様、柔らかく、気持ちいい。
次に下唇を啄む。
さっきとは違い、少し強めに。
「…ぅ…ん」
北野のビターチョコのような声が再び聞こえる。
もう止まらない。
「…ぅん…ん…」
息も出来ないほど、濃厚なキス。
無我夢中で、北野を求める。
キスをしたのは何年ぶりだろうか?
久しぶりに感じる、女を求めるこの感情。
「ぅ…ん…せん…せい」
北野の口からは、そう放たれた。
先生ではなく、男として見て欲しい。
「先生って言わないでくれ」
お願いするように言う。
「じゃ…『篤』?」
篤…北野に、名前を呼ばれただけで、体が興奮し、ぞくっとする。
同時に、下半身に熱が帯びるのがよく分かる。
「それがいい…菜海…」
そう言って、菜海を寝かせ、その上に覆いかぶさった。
ずっと口にしたかった言葉。
好きな人の名前。
好きな女性の名前を口にするのが、こんなに緊張し、こんなに嬉しく、こんなに…
愛おしいものだと知った。
菜海の一つ一つの反応が嬉しくて、可愛くって。
もっとビターチョコのような声が聞きたくて、鳴かせたくて。
耳を攻め、首筋を攻め、唇を攻め…
「っ…はぁ…」
思わず、吐息が洩れる。
その反応一つひとつが、俺の興奮剤に変換される。
「菜海って、耳弱いんだな」
耳元で囁く。
「ふっ…ぁ、耳元では…しゃべ…らないで」
菜海の顔が快感に歪む。。
眉間にシワが寄り、半開きの口。上気した頬。
だらしなく見えるこの顔。
しかし、今は誘っているようにしか見えない。
俺の舌は執拗に、菜海を攻める。
耳たぶから、中まで。
中には、舌を入れる。
「ふ…ぁ…」
合間に聞こえる吐息が、何とも色っぽい。
「…ぁん!」
攻めた跡を、指でなぞる。
可愛い声が零れる。
もう、無理だった。
止められなかった。
俺は、Tシャツに手をかける。
腕を上げさせ、剥ぎ取るように、脱がせる。
そのTシャツの下には、期待以上のものがあった。
形がいい胸。
それを妖しく表現する黒色のレースで縁取られたブラ。
白く、眩しいほど綺麗な肌。
ここで、電気が全て付いていることに気がついた。