年の差-番外編-7
部活にどれだけ貢献し、試合にもついて来てくれて、尚且つ、若いのは誰かとなったのだろう。
新任教官の中には、バド経験者もいた。
俺より、面倒見のいい教官もいた。
人柄ではなく、メリットで俺を選ぶ。
ある意味、怖いな。
「先生、私も聞いていいですか?」
不思議そうな顔をして、聞いてくる。
「何?」
「何で、今日あのライブ会場の前にいたんですか?」
どう答えよう?
本当のこと言って、同情とか買いたくない。
「あぁ…それは」
半分くらい残っていたビールを一気に飲み干し、吐き捨てるように言った。
「フラれた彼女と来る予定だったからだよ」
と、言ってみた。
大切な存在には変わりない。
恋人か友達か。
それだけだ。
男女が仲がよい=恋人同士なんていう方程式は、くそ喰らえだ。
…やばい、酔っているのか?
素直に話しても良かったんじゃないか?
でも、北野の気を引く為には、こんな拙い嘘しかなかった。
すると、どうだろう。
眉が僅かに動く。
口元も、真一文字のように固く閉じられていたのが、少し開く。
上唇と下唇がくっつくか、くっつかないかぐらい。
北野の顔は、一気に変わった。
今までは、疑いの眼差しだったのに対し、今では、共感を覚えたような表情。
「驚いた…先生もそうなんですか?私もなんですよ〜」
アハハと、笑う。
笑っているのに、とても悲しそうだった。
「お互い、フラれた者同士、飲みますか〜」
「そうですね〜」
なんて、いいながら飲んだ。
それから色んな話をした。
漫画とか、ゲームとか、あと学校のことなど。
北野は、意外と全教官と顔見知りらしく、『○○先生は、実は男が好きだ』とか、『高井は、匂いフェチ』だとか、どうでもいいことを話していた。
気が付くと、終電の出発の時間が近くなっていた。
結局、北野も最後には飲んでいて、二人は顔を赤くして、店を出た。
「先生、ごちそうさまです!」
財布に、札をしまいながら、
「あ、いいよ。気にするなって」
財布をジーパンの、右後ろポケットにしまう。
ふと、北野を見る。
赤くなりやすいのか、頬は赤く、目は少しトロンと垂れている。
でも、その目は、頼りなく、一人で帰すのは、危なっかしい。
「えっと…北野はどの方面だっけ?」
「こっちぃ〜」
指で指す方を見ると、俺が帰る方とは逆だった。
「そっかぁ…じゃ、送ってくよ」
駅へ向かって歩こうとすると、Tシャツの裾を引っ張られた。
振り返ると、北野の潤んだ瞳がこっちを見ていた。
その瞳は、とても、危なっかしく、心配で…
色っぽかった。