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年の差
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年の差-番外編-2

コンコン。
「はい」
「失礼します」
女の声。
時計を見ると、ちょうど4時。
時間きっちりに来た。
「先生、昨日の件ですが…」
と、入ってきたのは、昨日来た、北野。
「あぁ…何が必要?」
「先生のサインと、印鑑です」
印鑑?そんなもの、あったか?
「シャチハタでいい?」
机の引き出しから出てきたシャチハタを、見せながら聞いてみる。
「はい、大丈夫です」
と、言って分厚いバインダーから、書類を探す。
たかが学生の部活で、そんな書類、必要?
と、思ってしまうくらいの量。
この後、部活なのか、バドミントン用品を多く売り出して有名なメーカーの、ジャージを着ている。
腕にネームが入っているから、多分チーム全員で買ったのだろう。
上下黒で、背中には白で英語表記された学校名とBadmintonClubと、書かれていた。

「ありました。ここに、サインと印鑑お願いします。」
と、俺が座っている前にある机の上に差し出す。
机の上は、授業で使った教科書やノート、パソコンなどでぐちゃぐちゃだった。
「あ、汚くてごめん」
ノートなどを端に追いやり、スペースを作る。
「どこの先生も、そんな感じですよ」
と、言う。
よく聞いてみると、結構ハスキーな声。
目線の先には、書類とそれを支える指。
お世辞にも細いとは言い難いが、指は長く、色白。
爪も短く切り揃えてあり、綺麗に磨かれていた。
その指を辿る。
腕はダボダボのジャージを着ているから、分からないが、肩幅は広そうなのが分かった。
ジャージの上着は、1番上まで閉まっており、そこからのびる首は、白く、くすみなどなかった。
もちろん、シワもたるみもなかった。
顎のラインは引き締まっている。
決して薄すぎず、だけど厚い訳でもない唇。
顔の中心を、一筋通したような鼻。
ニキビも何もない綺麗な肌をした頬。
少し吊り目で、二重。
そこには、長い睫毛も。
眉もそれに加勢させるように細めに生えている。
前髪は、目にかからないように、ピンで留めてあり、後ろ髪はアップされていた。多分、解いたら、セミロング程あるだろう。


「ここにお願いします」
指で示された部分に名前を書く。
シャチハタを、右にある引き出しから取り出し、押す。
100円のボールペンで、さらさらと書く。
「はい」
書いた紙を、北野に渡す。
「ありがとうございます。では、ミーティング等の連絡などに、また来ます」
「あ、ならケータイの番号教えて」
「分かりました」
と、北野はズボンのポケットからケータイを取り出し、何か操作をして、俺に渡した。
画面には、‘北野’と書いており、電話番号とアドレスが書いてあった。
それを見ながら、打つ。
「赤外線で送りましょか…?」
北野が恐る恐る、提案する。
「あ。悪い。俺の機種、古いから使えないわ」
今じゃ、他社のケータイから送られてきても、大丈夫なのかもしれない。
しかし、俺のは、大学卒業ん時に、酒をかけられて、壊れ、そん時に変えて以来だったのだ。


懸命に入れた後、
「ありがとう」
と、ケータイを渡す。
ふと、その時、ケータイの裏を見る。
そこには、男と写ったプリクラがあった。
昨日、来た男と違う…
「では、失礼します」
と、去って行った。


北野が出て行った後、何故か寂しかった。
久しぶりに人恋しくなった。
これは、もしかしたら…いや、初めて味わうものかもしれない。


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