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年の差
【その他 恋愛小説】

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年の差-番外編-11

40度に設定されていたシャワーを頭から被る。
そこで、今日一日のことを思い出す。
ライブに行き、北野に会い、キスをして、さっきまでセックスをしていた…。
北野とセックスしたことには、後悔はない。
寧ろ、嬉しい。
あの試合の日から、想い続け、時には、夜の登場人物にもなった。
だが、実際、終わってみると、満たされているはずの気持ちは、何か物足りなさを感じている。
さっき、北野を前にした時、以前からのことを思い出した。
はっきり言って、前にいた彼女達はそれほど好きではなかった。
だから、北野は好きになれると思った。
愛せると思った。


だが、さっき分かった。





俺は所詮、女を性欲のはけ口としか見れないと。

あんなにも好きだと思った北野でさえ、愛おしく扱えず、最終的には腰を振ることに専念してしまった、自分。


俺は、そういうやつなのかもしれない。

そう自覚してみると、北野が欲しいという野望は薄くなった。

『恋愛とは性欲を満たす為の言い訳』と、誰かが言っていたな。
正にその通りかもしれない。

俺は一生、人を愛することが出来ないかもしれない。





翌朝、二人でホテルを出て、駅まで向かう。
お互いが方面が違う為、改札を通ったところで、別れる。
改札には、休日出勤するサラリーマンや、旅行に行くのか、大きなボストンバックを持った、OL風の女性が各々に階段を下る。
「じゃ、私はこっちなんで…」
恥ずかしそうに、言う。
しかし目は、何かを求めていた。
告白を待っているのだろうか?
悪いが、こんな気持ちで付き合う気はない。
何も教師と学生だからとかは言う気はない。
ただ、中途半端は嫌だった。
純粋な北野をこれ以上傷つけるのは、いたたまれない気分になるから。
「北野…」
そう名前を、口にした瞬間、北野の表情は変わった。
はにかむように少し開いていた口は、閉じられ、期待に潤ました瞳は、失望に変わり、頬は血の気が引いていた。
名前一つで、こんなに変わる…
もしかしたら、今なら手に入る?
もしかしたら、北野も同じ気持ちなのか?
でも、決めたんだ。
北野を諦めるって。
「昨日のことは、なかったことにしよう」
自分でも驚くぐらい、落ち着いて話す。
昨日の求めるような声は、何処へ行ったのだろうか?
北野の目は、微かに見開かれた。
そして、『女』の顔から、『学生』の顔に変わった。
「あ…そうですね…はい。分かりました。では、これで」
いつものハスキーな声になる。
声からは怒りも悲しみも感じられない。
枕詞のような返し。
「じゃ」
と、階段を降りていく。
北野の顔は見れなかった。


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