「深夜の病室」-4
「…んっ、んっ」
舞の咥内に橘の涎混じりの水が流れ込む。
必死に顔を背けようとするが、男の力には叶わず、舞は水を飲み下してしまった。
「ゲホッ、ゲホッ」
咳込む舞に橘は冷ややかな表情を向ける。
「素直に従わないから」
母親と一緒にいるときに見せた、誠実な橘先生の面影はどこにも見あたらなかった。
大きな瞳からポタポタと涙をこぼす舞の耳の後ろを橘は舐め上げる。
呼応するように舞の身体が弓なりにしなる。
「今、飲ませた薬なんだけど、催淫剤って言って分かるかな?」
聴き馴れない呼称に舞が顔を上げる。
「さい…いん…ざい?」
「そ、簡単に言うとエッチな気分になる薬。身体がゾクゾクしてこない?」
守るように胸を掻き抱く舞を後目に、橘は舞の下半身に手をかけて術衣と下着をするりと抜き取る。
舞が抵抗する間もない早業だった。
「じゃあ、術衣を洗濯室に置いてくるから、それまでいい子にしているんだよ」
再び部屋には舞一人が残された。
先刻の心細さとは対照的に、舞は自分の身体が火照っているのを感じていた。
…どうしよう。
身体が熱い。
何だかドキドキする。
そして、舞は下半身に痛いほどのむず痒さを覚えていた。
ドクン。
心臓の跳ね上がる音が聞こえる。
先生が戻ってくるまで…。
ほんの、そう、ほんの少しだけ…。
言い訳のように舞は考えると、おそるおそる自分の陰部に手を伸ばす。
ぬるりとした、湿った感触が舞を迎え入れる。
もどかしいような、切ないような気持ちで舞は指を前後する。
以前にも、一、二回舞には自分を慰めた経験があった。
好奇心から行ったそれは、舞に快楽をもたらすことはなく、何だか気持ち悪いと言う感触を残すに留ま
った。
しかし、今日の舞は熱に侵されたように自身に指を這わすことを止められなかった。
指を動かさないと、もどかしい。
しかし、指を動かすと、もっともっと欲しくなる。
「あっ…。はぁっ…ん」
いつしか舞は甘い声を上げ始めていた。
「僕が戻るまで待ちきれなかったんだ。やっぱり舞ちゃんは、生まれついての淫乱だったんだね」
いつの間に戻ったのか、ベッド脇から橘が舞の痴態を覗き込んでいた。
秘め事を覗かれてしまった恥ずかしさに舞は両手で顔を覆う。
しかし、その指先は舞自身の蜜でヌラヌラと光を帯びているのだった。
無垢でありながら、実に淫猥だ。
ポケットから取り出した包帯で、舞の手首を拘束しながら橘は、心も身体も上気するのを感じていた。