秋と春か夏か冬 10話〜『誰がための幸せ』〜-4
「…そう身構えるな。別に咎めようなんて思っとらん。ただ…冬白の進路については…聞いてるか?」
「進路……ですか?」
「あぁ。転校してきたときに本人の強い希望でな……留学したいと言っていたんだ」
……留学って………外国行く…あの留学だよな…。
「……その様子だと知らなかったみたいだな。うちの学校はそっち系にも力を入れてるから……冬白は始めから留学したいと言ってたんだよ。前からの夢だそうだ」
そんな…俺はなんも聞いてない…。
「だがな……この間その話は断ってくれと言ってきた。まぁ理由は……言わなくてもわかるだろう」
……俺…か…?だから今朝…。
「先生も他の生徒の事情を話すぎた…お前はとっくに聞いてると思っていたからな。今の話は忘れてくれ。呼び止めてすまなかった…行っていいぞ」
職員室を後にし考える。
(留学?…夢?……でも断ったって…)
色々なことが頭の中を駆け巡る。
(くそ!とりあえず本人に聞くしかねーか…)
―――その日の帰り道。
「美雪…」
「ん?なんだい?」
「帰りウチに寄ってかないか?」
「良いよ〜♪でも変なことしないでね♪」
「するか!……大事な話があるんだ」
「……わかった♪」
恭介の家に着き、とりあえずお茶をいれて一息つく。
(……こいつに回りくどいことは逆効果だよな…)
そう思い、恭介はいきなり本題に入る。
「…なぁ。美雪は…どこの高校に行くんだ?」
「??…嫌だなぁアッキーは…今朝も行ったじゃん♪アッキ…恭介達と同じ所に行くよ」
「…本当にそれで良いのか?おまえ…留学したかったんじゃないのか?」
驚きと困惑の顔で、美雪が俺を見た。
しばらく沈黙が続くが…美雪がそれを破る。
「……そっか。恭介は知っちゃったのか…いつ聞いたの?」
「休み時間に偶然、美雪の担任から……俺が知ってると思っていたらしい」
「…先生かぁ…参ったなぁ。でも……それは終わった話。もう関係ないよ♪」
そう言って笑ってみせる美雪。
でもその笑顔は明らかに無理している。