その一粒の-5
でも。
幸せなんて人それぞれだし、アタシは別に今のままで良い。
チョコ一粒くらいの幸せで満足するアタシは、馬鹿かも知れない。
だけどさ。アタシはそれでも良い。馬鹿で良い。
だってアタシはちっぽけだから。
手にちゃんとおさまる、小さな一粒の幸せで良い。それを大事にして、離さないでいたい。
「うん。ね、チョコ味わって食べてよね」
それが貴方に、伝わると良い。
「そりゃ勿論―――」
『犬に気をつけて』
アタシとクマノミは声を揃えてそう云って、大笑いをした。
ああ困った。
この気持ちは、チョコ一粒よりもっともっと大きそう。