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その一粒の
【青春 恋愛小説】

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その一粒の-3

「でさ、どんなの作るの?」
「トリュフチョコで良いでしょう。そんなに難しくないけど難しそうに見えて美味しい、割の良いチョコよ」
「うわ、嫌な理由」
「まあ、そうは云っても美味しさを追い求めたら大変だし、ショコラティエレベルの物を作ろうと思うなら、修業が必要だけど」
「いや、出来ないし。今からは」

翼子はそうよね、と云って茶色に染めた自分の髪の毛を撫でた。

キャラ的には黒髪が似合う感じなのに、翼子の髪の毛は明るい茶色だ。

一度理由を聞いてみたら、翼子は元々地毛が茶色いのだと云う。

翼子は云った。

『地毛が茶色いから、って云ってもバカは納得しないのよ。染めてんだろ黒くしろなんて、この私の生まれつきの性質を否定しやがるから、更に明るい茶色に染めてやったわ!』

そう云って翼子は笑うけど、きっとたくさん嫌な思いをしたんだと思う。

だって、一度ぽつりともらしたんだもん。

『ショーリは気にしなかったの。綺麗だって褒める事もしないし、そのままで良いよとも云わなかった。ああ、茶色いねそういえば、って云ったの』

ショーリはそんなの、本当にどうでも良いのよ―――そう云う翼子はとても嬉しそうだった。

「でも翼子が作ったら美味しそうだね。ショーリさん喜ぶでしょ」
「だと良いけど。ショーリ、ぼんやりしてるから」

そう云ってはにかんだ翼子は凄く可愛かった。

ショーリさんはきっと、この顔にメロメロなんだね、うん。

アタシは翼子の家に行く約束を取り付けて、隣のクラスを後にしたのだった。



「って事で、翼子に教えて貰うんだ」
「大豆生田になぁ。お前も変わった奴と友達だよな」

学校からの帰り、アタシはクマノミに翼子とのやり取りを話した。

クマノミは苦笑いを浮かべる。確かに翼子はちょっと変わり者だけど。

「でも、お前らしいっちゃらしいかもな。お前、家で作る時犬に気をつけろよ?」
「そりゃ勿論」

犬ってチョコ食べたら駄目なんだよね。
あの子はハウスに入れて、それでも落とさないようにしなきゃ。

落ちててぱくん、なんて大変だもん。

「一度クマノミんちのワンちゃん見たいな」
「ああ。今度日曜休めたら、招待してやるよ」
「やった!」

ご家族と会うのは緊張するけど、なんとかなるよね。

「犬も喜ぶな。あいつ、人が好きだから」

ワンちゃんの事を話すクマノミは、子供みたいに単純に幸せそうで可愛い。

それでも、胸の何処かはまだ痛いんだろう。

クマノミが前に飼ってたワンちゃんは、毒を食べて死んじゃったそうだ。


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