年上の事情。‐9-1
『言うの忘れてました
今日はありがとうございました
料理すごくおいしかったです
オヤスミナサイ 』
なんてことのない、一通のメール。
気が付くと、携帯を開いて見ていた。
自然と笑みがこぼれた。
元気が出た。
がんばろう、と思えた。
なんてことのない、一通のメール。
この言葉に、このメールに、この画面に、
どんな威力があったのだろうか。
今日は、見る気にもならない。
今日は、
見てはいけない気がする。
早く目が覚めた。
というより、眠れなかった。
出張の報告があるから、と香ちゃんにメールをし、いつもより早めに家を出た。
1週間ぶりの会社。
まだ誰もいない。低く小さな機械音だけが、部屋に響いていた。
「なんかなつかしいな‥」
入社1年目の頃はいつも一番乗りで来ていたっけ。
報告書を書き上げた頃には、少しづつ人が増えていた。
でもまだ就業開始までには時間があった。
すれ違う人たちに挨拶をしながらあたしは休憩室に向かった。
いつもより濃いめのコーヒーを入れる。
「はぁ‥」
一口飲んで気合いを入れ始める。
よしっ頑張るか!
自分のなかでテンションを上げていき、仕事モードに入っていく‥
と、いきたいところだが。