辛殻破片『仄暗い甘辛の底から』-6
「腹痛いんで早退します!」
有無も聞かず教室を出る。
途中、教員に声をかけられたりしたが無視して走り続けた。
校門を潜り、汗を拭う。
「…終わったーっ…」
時折当たる風が気持ちよく感じる。 勝者の証だ。
「…いやいや……」
冷静に考えると、俺はまだ勝っていない。 むしろ始まったばかりじゃないか。
今日は逃げれたからいいものの、明日からはどうすればいいんだよ?
…重畳な気分にもなれん。
とりあえずテストはもういいとして、これからどうするか?
歩きながら考えた。
「ううむ…」
『将太の家』に行こうかとも考えた。
しかしどうする、これ以上首を突っ込んでいいものか。
けど…今はやめておこう。 迷惑になるだけだ。
そして悩んだ結果、まずは自宅に電話することにした。
人の通らない街路に辿り着く。 ビニール袋が置いてあったが…特に気にする宛もなく、鞄から携帯を取り出した。
ボタンを押し電話帳を開いて『家電』に発信する。 ちなみに家電はその名の通り、家の電話である。
聖奈さんが出てくれるだろうと思い、携帯電話を耳に当てる。
一回、二回、とコールが鳴り、三回目にしてようやく出た。
…留守電センターの女性が。
「留守番電話サービスセンターに接続し」
切った。 通話終了。
「おかしいな。 留守電設定なんかしてないはずなのに…」
自宅に繋がらないのなら、あとは一つ。
聖奈さんの携帯電話…だが電話帳に登録してない為、番号を思い出してダイヤルボタンを押すしかない。
「…3…あいや、1だったか…?」
思い出せない。
機械に頼りすぎて知能が低下するとは、あながち嘘ではなかった様だ。
じゃあ諦めるのかと問われたら、諦める訳にもいかない。
電話帳を開き、" は行 "に回す。
『変態馬鹿女』…さあどうするか。